人文社会学、デザイン、芸術、メディアデザイン、建築など…材料基軸のプロジェクトデザインを多く手掛けるMTRLのメンバーは、多種多様なバックボーンを持ったメンバーが集っています。
本企画では、MTRLメンバーのこれからのマテリアルを考える上でオススメする書籍を紹介します。それぞれの選ぶ書籍を通してそれぞれのメンバーの考える「マテリアルとは何か?」に迫ります。

第8回目は昨年秋にMTRL TOKYOにジョインしてくれた、メンズ特集になります。
前職では、建築・インテリア・建材などの人の暮らしに欠かせない領域で活動をしていた2人が考える「マテリアル」とは何か?本記事最後まで必見です。お楽しみください。
vol.5登場メンバー
株式会社ロフトワーク, MTRL クリエイティブディレクター
村元 壮
東京外国語大学国際社会学部卒業。大学卒業後は材料供給の立場から空間づくりに携わりたいと考え、木材商社に入社。国内での卸売営業と海外からの仕入れ業務に従事し、木材流通における商流や木材業界の大枠を捉える。その後より現場に近い立場で木材に関わりたいと考え、東京の調布に本社/自社工場を構える株式会社ティンバークルーに入社。木材加工品の営業を行い、フローリングを中心に、国内の物販店や飲食店などの設計を行うインテリアデザイナーへのスペックイン提案を行う。木材に限らず、様々な素材の可能性を、定量・定性の両面から捉えたいと考え、ロフトワーク/MTRLに入社。
株式会社ロフトワーク, MTRLプロデューサー
中塚 大貴
1993年生まれ。東京理科大学大学院 建築学専攻 博士前期課程を修了。建築設計事務所を経て、場づくりを得意とする不動産ベンチャーにてオフィスやインキュベーション施設の企画・デザイン・運営に携わる。働く環境や働き方を考えるなかで、空間デザインに留まらない総合的なアプローチに取り組みたいと、2020年より週4日の会社員とフリーランスという働き方を選択。フリーランスではD&Iやデジタルシティズンシップ、ケアをテーマにした企画やディレクション、組織づくりに取り組んでいる。2023年よりロフトワーク MTRL所属プロデューサー。
MTRL クリエイティブディレクター 村元 壮

オススメ書籍①
書籍名|TRUCK WORKS〈3〉57 SORTS OF FURNITURE


コメント :
大阪の家具屋TRUCKのカタログ”TRUCK WORKS”。家具はもちろん、写真も、紙も、そこに映し出されるTRUCKさんの想いやスタイルも全て丁度よく、”かっこ良い”。前職で木材のエイジングを生業とし、デザイナーが求める”シャビー”や”味がある”と”汚い”の境目を日々模索する中で、基準となってくれた本で、今もプライベート含め、自分の中で”良いもの”を探すときに指標として立ち返る本です。
オススメ書籍②
書籍名|Lessons from Madame Chic

コメント :
4,5年前に雑誌読み漁ったり、スマホで永遠にECサイトを彷徨ったりするのに疲れ始めてたころになんとなく古本屋で購入した本。服のことだけじゃなくて、物質主義だったアメリカ人の著者の心に残った典型的なフランス人の暮らしを紹介していて、パリにいた友達ってこんなだったっけと少し疑問に思いつつも、流行りとか人にどう見られるかばかりを気にしていた生活を反省してそのまま本棚に加えた。この企画で2冊目を、と探して久しぶりに手に取ったけれどもLWに入社して、難しい議論や聞き慣れないカタカナに囲まれて過ごしている今の自分には当時とはまた違う意味で心地よいと思えた。しかし未だに自宅のクローゼットはこの本の邦題にはほど遠い。
MTRL プロデューサー 中塚 大貴

建築を学ぶ大学-大学院時代、設計行為のなかで用いられる言葉に関心が向いていきました。模型やモックアップと言葉のズレが、ふとした瞬間に新しいアイデアを生み出す。そんなダイナミックなプロセスを、素材の可能性や研究開発の現場にも持ち込めないか、そんなことを思ってご紹介します。
オススメ書籍①
書籍名|[増補]「名づけ」の精神史:市村弘正

コメント :
筆者によると人と物や社会との関わりは「名づけ」となって現れているという。そして関わりが変わると名づけも変わってゆくのだそうだ。
ある日、赤ちゃんがおもちゃを「ブーブー」と呼びはじめる。幼稚園に預ける頃には「車」と呼ぶだろうか。もう少し大きくなると「消防車」と呼ぶかもしれない。名づけ直されるのは物だけではない。入籍すれば苗字が変わるし、昔は若き徳川家康が「竹千代」と呼ばれていたりもした。
僕がなにを言いたいかというと、素材(マテリアル)との関わりも築き直し続けられる(かもしれない)ということだ。そして注意したいのは「名づけ」だけを表面的に変えるのではなく、「関わり」から変化させることだと思っている。
触れた感触はどうか。加工してみると道具に見えるかもしれない。素材が生まれる過程にどんな物語を見出せるだろうか。そんな態度で素材に向き合おうと思わせてくれる一冊だと思っている。
オススメ書籍②
書籍名|「わかる」ということの意味[新版]:佐伯胖

コメント :
素材との「関わり」から価値を見出したとして、それをどのように広められるだろうか。
認知心理学者の佐伯胖さんはこの本のなかで「文化的実践」という、価値が広がってゆくプロセス(①価値を発見し、②他者に価値を共有し、③価値を持つものごとを生産し、④価値を持つものごとをさらに広めたり、持続させる技術を開発する)を持ち出している。
これは一定の妥当性を持っていると思いつつも、②で他者に共感してもらえなかった価値もたくさんあったのだろうに、とか想像して少し悲しくなる。スティーブ・ジョブズみたいな、突破力のある人ばかりじゃない。
そこでアートやデザインの力が使えないだろうか。素材や研究から見出した新しい価値を伝えるためにつくる。素材や研究開発に伴走するデザイン活動が、もっとあっていいんじゃないかと思っている(僕が知らないだけかもしれないけれど)。)のですが、放哉の「“身体”をどこか離れたところから“物質”として見ている」ようなある種ドライで客観的な視線から、ドライどころかむしろ強烈なエモーションが引き起こされる感覚は、「素材を起点にした体験価値」を考えるうえで大きなヒントになるような気がしています。物質や現象と人間の感情を直結させて拡張、増幅するナラティブのつくりかたは詩や俳句から学べるのかもしれない、そんな予感。