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【短期連載】MTRLメンバーが選ぶオススメ書籍紹介vol.4(ニューフェイス編)

【短期連載】MTRLメンバーが選ぶオススメ書籍紹介vol.4

人文社会学、デザイン、芸術、メディアデザイン、建築など…材料基軸のプロジェクトデザインを多く手掛けるMTRLのメンバーは、多種多様なバックボーンを持ったメンバーが集っています。
本企画では、MTRLメンバーのこれからのマテリアルを考える上でオススメする書籍を紹介します。それぞれの選ぶ書籍を通してそれぞれのメンバーの考える「マテリアルとは何か?」に迫ります。

第4回目は新生活が始まる4月という事で、MTRL TOKYOに最近ジョインしたフレッシュな3人にフォーカスします。
※4月からジョインした2名については紹介記事内で自己紹介をしてもらっています。

vol.4登場メンバー

MTRL エンジニア
土屋 慧太郎

高専で電子工学を学び、大学院ではヒューマンコンピュータインタラクション・ウェアラブルコンピューティングを研究。現在は、ハードウェアを用いた研究プロジェクトや展示制作やWebでディレクションなど、ラピッドプロトタイピングのスキルを活かし多岐にわたる場面で活動。「身体性」を軸に「思考」と「試作」を行き来するスタイルで、日々ものづくりの楽しさを探求している。

MTRLエンジニア 土屋 慧太郎

オススメ書籍①
書籍名:「嘘と聖典」
コメント :
SF作家の小川哲さんの「嘘と聖典」を紹介させていただきます。
この本は、作者のエンタメ・SF・ミステリ短編を6つ収録したもので、タイトルの「嘘と聖典」は収録作品の一つです。SFといえば、未来の技術やディストピアを思い浮かべるかもしれませんが、収録されている作品の中には、音楽や競馬、暴走族などといった私たちに身近なカルチャーを題材にした不思議な物語もあり、それが私にとって魅力的でした。短編で一気に読めてしまう点と、何か余韻が残るSFに没入できる体験がおすすめのポイントです。

オススメ書籍②
書籍名:「コンクリート・アイランド」
コメント :
J・Gバラードの「コンクリート・アイランド」は、高速道路の中州のような三角地帯に交通事故で入り込んでしまった主人公が、脱出するためにあれやこれや奮闘するという物語です。
コンクリートに囲まれた都会において、無人島に漂着しサバイバルを繰り広げるというような展開が始まる、面白い設定です。去年自分が引っ越した先に似たような道路の三角地帯があり、上から覗けるのでその場所が気になっていたときに、以前知ったこの本のあらすじを思い出して取り寄せて読んだ本です。
それ以来、謎の空間や立入禁止の場所を見ると、「ここに入ってしまったら脱出できるか」「この空間なら住めそう」と考えてソワソワしてしまいます。
妄想という拡張現実を通して、普段過ごす都市を見てみると、まだまだ面白そうな場所はいっぱいあることに気づくことができます。

MTRLクリエイティブディレクター 三浦 永

みなさん、こんにちは。
4月にMTRLチームにjoinしました、三浦永(みうらはるか)です。
多摩美術大学映像演劇学科写真専攻を卒業し、科学館勤務やアニメーション会社などを経て、この春ロフトワークに入社いたしました。
異業種から異業種へと渡り歩いてきた私ですが、あえてそれらを強みにし、多様な目線を持った人材として活躍していきたいです。まだ見ぬ『素材・マテリアル』をこれまでのメンバーとは違う角度で見つめていければ、と思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

オススメ書籍①
書籍名:「Ansel ADAMS THE NATIONAL PARK SERVICE PHOTOGRAPHS」
コメント :
写真家アンセル・アダムスが撮影した、ヨセミテ国立公園などアメリカの雄大な自然の姿をおさめた手のひらサイズの写真集。
この本との出会いは、体調不良で職場を早退した春の初め、自宅近くの古本屋に寄り道した際にたまたま見つけて購入しました。多分800円くらいだったと思います。
かつて写真美術館などで見たことのあるアダムスのプリント作品は、どれも必ず六切りサイズ(A5くらい)ほどはあります。彼の作品は8×10という巨大なフィルムに収められたもので、その解像度は現代の高画質なデジタルカメラにも匹敵するほどです。それをまさか手のひらサイズの本にしようとは。記録メディアと視聴メディアのサイズ感のギャップに、どうしてか心惹かれました。
アダムスの美しい写真に魅了された人々は、この美しい風景たちを自分の鞄に入れたくなったのでしょうか。
手のひらサイズなのでコンパクトで見やすいかと思えば、実はそうでもありません。と言うのも、小さなサイズに見合わない厚切り食パンのような厚みによって、到底ペラペラと見れるような代物ではないからです。ある意味、見方を変えれば、本来のアダムス作品の厚みを表しているようにも感じられます。
作り手のなんともいえない制作プロセスを感じて、モノとしてのあいらしさを感じる1冊です。

オススメ書籍②
書籍名:「土を編む日々」
コメント :
「きょうの140字ごはん」というTwitterアカウントを運営し、出版社勤務を経てエッセイストとして活躍する、寿木けいさんによる料理エッセイ本。もちろんレシピもついています。

彼女の紡ぐ言葉に惹かれるのは、質感の描写にあります。表紙にあるえんどう豆の質感はもちろん、コンロの火や沸いたお湯の様子が美しく、しかしとてもシンプルな言葉で書かれています。この本の執筆当時は東京から山梨へ移住される最中だったこともあり、二つの地域の風の違いもそこはかとなく感じ取れるようです。

また寿木さんの言葉と同じ温度で存在しているのが、砺波周平さんの写真。包丁さばきの音が聞こえてくるような写真は、瑞々しく食の季節を映し出しています。

そうして撮られた素材の美しさが、料理の美味しさに繋がるように思い、一口に料理エッセイ本とは括れない内容がある気がしています。

MTRLクリエイティブディレクター 牧野 愛花


はじめまして。牧野 愛花(まきのあいか)です。
北海道生まれ北海道育ち、北海道大学薬学部卒業。
デザイン文具メーカーで商品企画を経験後、グラフィックデザインや空間デザインを学んでいました。アウトプットに至るプロセスや考え方に面白さを見出し、クリエイティブの世界にジョインしました。
MTRLでは質量のある素材の活用から、概念的なことまで、取り組みに広がりがあるのが面白いなと思っています。
持続可能性が叫ばれる昨今、素材のあり方を問い直すことは重要度を増していると思うので、MTRLチームとして考えを深めていきたいです。

オススメ書籍①
書籍名:「1000%の建築 僕は勘違いしながら生きてきた」
コメント :
建築家/起業家として活躍されている谷尻誠さんの最初の著書。当時、何気なく手にとったこの本が、谷尻さんとの出会いでした。
湧き出る疑問を持っていた子どもの頃のような、道具の”使い方を間違える才能”を持っていたあの頃のような、、”思い込み=「勘違い」”がときにポジティブな思考法になり、不可能を可能にする限界点を突破するエネルギーとなる。無邪気な好奇心を思い出す、そんな思考のエピソードが、遊び心のあるグラフィックや印刷でしつらえられています。

このしつらえへの拘りも大好きで、本文用紙は折りが進むにつれだんだんと厚みをもち(薄っぺらい人間が厚みを増していく様子を込めているそう)、透明について語ったページには透明インクを使い、活版印刷もあり、蓄光インクを使ったページがあり・・・

以前文具メーカーに勤めていて多少印刷や製本の知識がある身としては、関わった皆様にあっぱれと言いたくなるこだわりようで、唸ります。

めくるだけでワクワクする絵本みたいな姿をしながら、普遍的な、考えることを考えさせてもくれる存在。

帯やカバーに至るまでこだわりの仕掛けがたくさんなので、ぜひ手にとって味わい尽くしていただきたい一冊です。

ー2020年には改訂本として「1000%の建築 つづき」が出版されています(印刷がリッチなのはこちらで紹介している2012年版です)。未完成で空白だった糸井重里さんとの対談ページは実現して文字で埋まり、当時の2020年までの未来予想年表との違いもまた面白いので見比べてみても。

オススメ書籍②
書籍名:「石×デザイン -自然素材を生かした創造的スタイル-」
コメント :
石や石にまつわるデザインの作例集です。
「石」はその辺に転がっている身近な存在ですが、その石は石になる前から何万年もの歴史を秘めてたりと、神秘的な存在だなとも思うのです。
石を加工したデザインから、石のような素材感を表現したものまで、様々。

こちらの本は、「石」の他にも「木」と「金属」の3シリーズがあるようなので、お好きなマテリアルを一冊選んでみてはいかがでしょうか。

オススメ書籍③
書籍名:「自由からの逃走」
コメント :
昔から、自分で道を開いていく人に憧れを持ち、自由でありたいと思ってきました。

けれど、憧れと現実の狭間に強い自分というものを持てず、漠然と人生に迷っていた時に差し出してもらった本です。

子どもの頃はおおよそレールの上を歩いてきて、それゆえ大人になってからは何かに縛られずに生きていきたいと模索してきた人生でした。一方で、レールから外れるのが怖かったのも自分。

まさに、自由を求めながら、その不安と孤独に苛まれ、「自由からの逃走」をはかろうとするかのような、、

ロフトワークには、自分らしい生き方を見つけている人が多いように思います。
想像の枠を超えていくクリエイティブの仕事は奮い立たせてくれるもの。ここで自分らしく、クリエイティブと向き合っていきたいなと思っています。

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