• Project Report

サーキュラーエコノミー社会を見据えた新規事業開発 バンドー化学 新技術の用途開発プロジェクト

◎ 本プロジェクトは、MTRLを運営する株式会社ロフトワークがプロデュース・ディレクションを手がけた事例です。

Outline

“循環型ものづくり”の実装に向け、開発技術の方針を導く

ゴム・エラストマー製品メーカーのパイオニアで創業110年を超えるバンドー化学株式会社(以下バンドー化学)。新たな市場を獲得していくために、中長期視点の新規事業が必要とされています。現在は医療機器や電子資材を次の事業の柱にすべく取り組みながら、経営企画部ではさらなる事業探索を進めています。その中で新規事業企画チームは、既存の枠組みに囚われないアプローチを取り入れ、社外のチームを交えた共創手法を用いての事業探索に取り組みました。

ロフトワークは、「未来の社会を描いたときに、どのような存在でありたいか」から逆算して今からの一歩を考える、未来の社会的ニーズに基づくプロセスの必要性を提示。バックキャスティング手法を用いたロードマップワークを行い、バンドー化学のあるべき未来像を共に描きました。 ワークの中で未来の環境配慮を考える上でのキーワードとして、近年欧州を中心に盛り上がりを見せている「サーキュラーエコノミー*」の概念に着目しました。その中で、新規事業を「環境配慮型ものづくり」を実践していくための事業開発と捉え直し、現在開発中の技術の用途を開発するためのマテリアルリサーチを実施。来たるサーキュラーエコノミー実装社会において、開発技術がどのように必要とされるかを描き出し、その用途の今後の可能性と開発方針を明らかにしました

*サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのことを指します。(https://ideasforgood.jp/glossary/circular-economy/より引用)

プロジェクト概要

  • プロジェクト期間:2020年5月〜2020年9月
  • プロジェクト体制:
    クライアント:バンドー化学株式会社
    プロジェクトマネージャー:上ノ薗 正人
    リサーチプランナー:国広 信哉
    クリエイティブディレクション:服部 木綿子
    プロデューサー:小島 和人、田根 佐和子
    クリエーター:

Outputs

サーキュラーエコノミーマップ

有識者インタビューにご協力いただいた 梅田 靖氏(東京大学 大学院工学系研究科 教授)からは、本マップについて「こうした定性的、叙述的な内容でサーキュラーエコノミーの全体像を表した画はこれまで見たこがなく、とても良い取り組みだと思います。」とコメントをいただいた。

サーキュラーエコノミーマップ ダウンロード

以下のサーキュラーエコノミーマップは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0*)を付与し一般公開します。 このライセンスは、非営利な目的のもと、適切なクレジットの表示、ライセンスへのリンク貼付、変更がある際はその旨を表示し再配布の際は同じライセンスを付与すれば、利用・再配布することが可能です。営利目的の利用の際は、ロフトワーク広報(pr@loftwork.com)にお問い合わせください。

チームの熱量を高め、モチベーションを高める場づくり

2日という短期間でTEAM クラプトン協力のもとDIYで、実験拠点であるレンタル工場、通称「出島ラボ」の改装を実施。メンバーの熱量を高め、“ワクワク”しながら開発を行える場作りを行った。ラボ内には試作品の展示スペースや床下収納も設けられ、機能面のアップデートも同時に行われました。

実験拠点であるレンタル工場、通称「出島ラボ」。秘密基地のような空間に仕上げた。

Process

プロジェクトの流れ

Phese0:バックキャスティング手法により、バンドー化学の未来像を描く

技術起点の開発だけでは、既存の開発法から抜け出すことはできません。未来の社会ニーズを起点とした発想に転換するため、バックキャスティング手法を用いたロードマップワークを実施。数十数年先に、世界はどのように変化し、バンドー化学はどのような企業になっていたいのか、またなるべきなのかを改めて定義しました。

ワークを通じて導いたキーワードはバンドー化学全体の思想にもつながる「環境配慮型のものづくり」。これを、開発技術の方針の中心に据えました。また、将来は主力事業の伝動ベルト、搬送ベルトにもそのノウハウを波及させ、地元神戸との関係もより強固にしながら、教育にも展開していくバンドー化学未来像を示しました。

【テンプレートダウンロードあり】ロードマップの活用方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。>>

Phese1:製造業におけるサーキュラーエコノミーの全体像を構造化し、開発の方向性を定める

「環境配慮型のものづくり」の実装に向け開発技術の方針を検討するため、第1フェーズではサーキュラーエコノミーそのものを深く理解するためのリサーチを実施。
120を超える製造業における世界のサーキュラーエコノミーの事例収集と有識者へのインタビューを行い、サーキュラーエコノミーの取組の全体像を構造化しました。これらはサーキュラーエコノミーマップとしてアウトプットし、開発技術がサーキュラーエコノミーの全体像の中でどうコミットしうるのかを表現しています。

リサーチを通じて、開発技術がサーキュラーエコノミー実装社会において機能しうること、さらには事業化の期待が持てること示されました。広大な領域を横断するサーキュラーエコノミーの考えの中で、開発技術がどの領域に入り込むべきなのかを明らかにし、今後の開発指針を定めました。

本リサーチにて収集した世界の製造業におけるサーキュラー・エコノミー事例(国内事例/海外事例)から111事例を一挙公開いたします。

【まとめ】サーキュラーエコノミー事例一挙111紹介!

Phese2:クリエーターの多彩な視点から開発技術の新たな用途を見出す

第2フェーズでは開発技術のサーキュラーエコノミー社会における潜在的な使いみちを見出すため、マテリアルデザイナー、リサーチャーや建築家など、多彩な専門性を持つクリエイター6名とプロトタイピング制作を通じたリサーチを実施。プロトタイピングを通じたデザインリサーチと位置づけ、最終的なプロトタイプに加え、制作過程で生まれるクリエイターの気づきやコメントからも用途開発における新たな視点やアイデアを抽出しました。

クリエーターがそれぞれの視点で素材を選定。ラボではクリエーターからの指示書をもとに、開発技術との組み合わせ検証を行いました。加工時の気付きも含めクリエータにフィードバックし、その結果から次なる素材や形の検討し、試作を繰り返しました。

6名のクリエーターとのプロトタイピングを通じて、開発技術を事業化するためのアイデアや、開発技術が未来の生活に及ぼすストーリーを導きました。

コロナ禍の中、物理的な共創を可能にするプロトタイピングのアイデア

対面でのコミュニケーションが制限される今だからこそのリサーチ手法にチャレンジしました。オンラインベースのコミュニケーションと「ボックス」を介しプロトタイプと材料のやりとりを行う制作プロセスを設計。対面の打ち合わせのみに頼らず、距離を超えたクリエイターとの共創を可能にしました。

クリエーターが送った素材と仕様書にもとづき、出島ラボで加工を施すやりとりが繰り返されました。
クリエーターとのやり取りに使用されたBOX。

コラボレーター

秋山 かおり
STUDIO BYCOLOR 代表 / プロダクトデザイナー

岩崎 恵子
イワサキケイコキカク代表 / プランナー

置田 陽介 / 横山 道雄 / 井上 真彦
elements / リサーチユニット

髙橋 渓
COL.architects代表 / 一級建築士

𠮷田 勝信
𠮷勝制作所代表 / グラフィックデザイナー

吉行 良平
吉行良平と仕事代表 / プロダクトデザイナー

「先入観の壁」を理解し、突破する“共創”の実践

普段から携わってきているが故に社内では気づけない「先入観の壁」が存在します。その先入観の壁を壊すために「外部の目線」を活用し、開発技術の価値を再定義するために実施した本プロジェクト。
一つのドキュメントを共同で編集しながらのデスクトップリサーチや、収集した情報を合宿形式で構造化するなど常に共同作業でリサーチが進められました。
受発注の関係を超え、チーム一体となり一つのテーマについて考えることで、その過程や結果で見出された新しい価値を「自分ごと」として捉えることができます。プロジェクトを通じての気づきや、学んだ手法は今後の事業開発でも再現可能な質の高い学びの機会となりました。

Member

Member

バンドー化学株式会社 新規事業企画担当 リーダー
及川 征大

バンドー化学株式会社 新規事業企画担当 主事
田浦 歳和

バンドー化学株式会社 新規事業企画担当 参事
宮田 博文

株式会社ロフトワーク / クリエイティブディレクター
上ノ薗 正人

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター
服部 木綿子

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター
国広 信哉

株式会社ロフトワーク / プロデューサー
小島 和人

株式会社ロフトワーク / MTRL プロデューサー
田根 佐和子

メンバーズボイス

バックキャスト思考を活用しながら、共創による自分ごと化を進めるプロセス提案に興味を持ち、パートナーにロフトワークさんを選びました。KJ法を用いたワークショップなど、短期集中でキツかったですが、良いアウトプット、学びができ、今後のあらゆる活動に活かせると感じました。
チーム内でも循環型経済をプロジェクトのベースにし、常に未来志向で取り組む姿勢が更に強化されています。本プロジェクトで、外部共創、バックキャスト思考を取り入れながらプロジェクトの目的を再定義、自分ごと化できたことは、今後のあらゆる活動に通じるものがあると痛感しています。プロジェクトへの還元のみならず、社内他部署にも還元できるよう取り組んでいきます。

バンドー化学株式会社 新規事業企画担当 リーダー 及川 征大

今回、新技術の用途開発のご相談から始まった本プロジェクトは、一見大きく回り道をするような軌跡を描きました。
目の前の新技術をとにかくビジネスに、も大事ですが、そもそも最終的に会社と自分はどうありたいか?から問い直すことで、本来目指すべき方向性、強みの再確認を「サーキュラーエコノミー」を肴に再定義することで、結果として双方の思いも共有でき、その後のプロトタイピングもスピード感をもって展開。拠点づくりもまるで秘密基地をつくるように一緒に取り組ませていただきました。
時には「プライベートな私」の思いもさらけ出すことで、今回の新技術を自分ごと化から「自分たちごと化」できたと感じています。一個人としても、この技術の今後の展開がとても楽しみです!

ロフトワーク クリエイティブディレクター 上ノ薗 正人

会えなくても熱量と手触りのあるリサーチが出来ることを実証した、パンデミックと共に始まったプロジェクト。
遠方のクリエイターの皆さんとのプロトタイプ制作のやりとりは、相手を思いやる原始的な心配りと、物理的な面倒臭さが伴って、オンライン一辺倒になってしまいがちだったコロナ禍のアクティビティとしても良かったです。
バンドー化学の皆さんと一緒に汗を流して「出島ラボ」を秘密基地化したことは、プロジェクトの本筋ではないけれども、とても価値のあることでした。クライアントの皆さんとあたかも同じ会社のようなチーム感が醸成され、コミュニケーションが円滑だったからこそ、オンオフを駆使した今回のリサーチが成り立ったのだと思います。
バンドー化学の皆さんのファンになりました!これからも楽しみです。

ロフトワーク クリエイティブディレクター 服部 木綿子

Service

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