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【MTRL × Panasonic Aug Lab】 生物のもつ環世界から拡張可能性を探求した「環世界インタフェース」を公開しました

MTRLでは2020年8月よりパナソニック株式会社のAug Labの共同研究パートナーとして活動を行ってきました。
今回、人と生物、インタフェースの関係性について探求し、プロトタイピングする「環世界インタフェース」プロジェクトを展開。インタラクションデザインユニットGADARAも交えて制作を行いました。本記事では、成果物と展示に関してご紹介します。

 

プロジェクト概要

Aug Labとは?

 

パナソニック株式会社ロボティクス推進室が主宰する「Aug Lab」とは、ロボティクス技術が自動化(Automation)以外にもたらす新しい価値として、自己拡張(Augmentation)をテーマに研究開発を行うためのオープンラボ型の組織です。本プロジェクトは2020年共同研究パートナーとしてMTRLが採択されたことから始動しました。

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環世界インタフェースとは

MTRLは「環世界インタフェース」というテーマを元に制作を実施しました。
ドイツの生物学者・哲学者ユクスキュル(1864〜1944)が提唱した環世界(=Umwelt:ウンベルト)とは、「すべての生物は自分自身が持つ知覚によってのみ世界を理解しているので、すべての生物にとって世界は客観的な環境ではなく、生物各々が主体的に構築する独自の世界である」と自著「生物から見た世界」の中で論じています。

今回のプロジェクトでは、その環世界の概念を人と環境をつなぐ「インタフェース」に導入することで、人と環境やテクノロジーとの関係性に感性的な拡張を行えるのでないかと仮説を設定。リサーチとプロトタイピングを行いました。
その中でも、見た目は似ているにも関わらず、多様で多彩な個性を持つ「コケ」に着目し、人の他生物に対する「共感の拡張」をテーマに「UMOZ」と「MOSS Interface」という2つの作品を制作しました。
※両作品とも現時点で販売予定はありません。

 

作品紹介①
コケの振る舞いからその生命がもつ環世界を想像するきっかけをつくる
「UMOZ」

UMOZはコケの環世界にインスピレーションを得て制作した移動式ロボットです。
コケは日光・水・空気を葉や茎などから吸収し、それぞれの種類が適した環境に根差します。コケには「仮根」という器官があります。仮根は一般的な植物の根とは異なり、養分や水分を吸収する機能を持たず、ただ定着するための脚のような役割を果たします。そのため、コケは他の多くの植物のように土が必要ではなく、石の上や木の表面などに定着することができます。
一方で、人間が暮らす現代社会は光や湿度が自在に制御され、環境の状態は常に移り変わっていきます。 そのようなある意味「制御された自然」環境でコケが合理的に生きるとしたら、仮根は「根差す」のではなく「移動する」ための器官になるのではないでしょうか。
コケの移動能力を拡張することは、コケの知覚が振る舞いとして表出されることにつながります。コケの環世界について考えるきっかけをつくることで、人のコケや自然環境に対するエンパシー(共感)を促進させます。

作品紹介②
インタフェースを「制御」から「共生」の対象へ
「MOSS Interface」

私たちの身の回りにはスイッチを始めとしたさまざまなインタフェースがあります。それらが搭載された製品には、ユーザーの操作が確実に反映される「正確性」が求められています。その正確性が求められるインタフェースを「制御」から「共生」の対象へと発想を転換したのが本作品です。
コケは葉や茎から湿気などを取り込むことで成長しますが、種類ごとに適切な水分量や乾燥速度にはそれぞれ違いがあります。MOSS Interfaceはこの性質と人の暮らしに重要な照明を連動させることで空間内での体験に変化をもたらします。
コケは時間帯や季節ごとに適切な湿度が常に移り変わっていきます。それゆえ、MOSS Interfaceのユーザーは照明から望ましい光量を得るためには、コケの湿度を「適当に」コントロールする工夫が求められます。今日の気候、自分の気分、コケとのバランスを考慮し、望ましい環境を実現するために、「今日はどれくらい水をあげればよいか」を考えながらインタフェースと向き合う必要があります。このような関係性をもったインタフェースによって、コケや我々を取り巻く環境への想像力や共生を想像するきっかけをつくることを目指しました。

プロジェクトのこれから

リサーチやプロトタイピングをする中で、生物の環世界を知り、表現することの難しさを知りました。

生物がどのような主観的な体験や感覚(=環世界)を持っているのかということについては、人間は科学的な観察などでもって、我々の理解できる知識形式で評価や実践に応用することでアプローチをしてきました。その方法をいくら工夫しても、原理的にはその生物が主観的に体験していることそのものを知ることにはなりえません。

根本的に、環世界(=生物各々が主体的に構築する独自の世界)を知るということが難しい中で、私たちがなぜ「環世界」に着目することに可能性を感じたのかというと、主観的な体験や感覚は原理的に「わかりえない」からこそ、その「わかりあえなさ」を共有するための方法に多様性を持たらすことで、その多様な世界を感じるきっかけをつくることができると考えたからです。

そして更に、その多様性を感じる方法を、これまで「制御」の方法であった「インタフェース」に採用することで、インタフェース自体の多様な可能性をひらいていけるのではと考えました。ユーザをつなぐ「制御(=コントロール)」のためのインタフェースではなく、ユーザとともに存在し「共生する」ためのインタフェースであることで、「わかりあえない」我々に、これまでとは異なる感情や認識、理解が生まれるのではないか、そんなことを思って、「環世界インタフェース」は生まれました。

今回の成果物に関してもまだまだコケの環世界を理解、表現できていないことが多くあります。ですが、コケの環世界を知ろうとして、「コケがどんなことを感じているのだろうか?」と思いを巡らしながら向き合うことで様々な発見につながりました。
展示会などの場でフィードバックをいただく機会を設け、さらなるブラッシュアップを行っていけたらと考えています。そして、今後はコケ以外の生物にも着眼した環世界インタフェースを考えていけたらと思います。

▼パナソニックからのリリース一覧

UMOZ – Umwelt of Moss with augmented-rhiZoid
https://tech.panasonic.com/jp/auglab/ideas/umoz.html

MOSS Interface – What if Moss was an Interface?
https://tech.panasonic.com/jp/auglab/ideas/moss_interface.html

パナソニックセンター東京AkeruEにて「自然から見た世界」をテーマに展示
https://tech.panasonic.com/jp/auglab/news/20210706.html

7月6日よりAkeruEにて作品を展示します!

本プロジェクトの作品「UMOZ」と「MOSS Interface」を展示します。
場所は2021年春、東京・有明に新しく誕生した・パナソニック クリエイティブミュージアム「AkeruE(アケルエ)」。子どもたちに、”学び”と”モノ・コトづくり”の双方の体験を提供する施設です。

Aug Labが目指す自己拡張(Augmentation)の世界をぜひ体験してみてください。

詳細はこちら

展示詳細

出展者:
2020年「Aug Lab」共同研究パートナー
・MTRL
We+

展示会場:「ひらめき」をカタチにするミュージアム 「AkeruE(アケルエ)」

パナソニックセンター東京 2F「GAIA」
〒135-0063東京都江東区有明3丁目5番1号
りんかい線「国際展示場駅」徒歩2分
新交通ゆりかもめ「有明駅」徒歩3分
https://www.panasonic.com/jp/corporate/center-tokyo/akerue.html

プロジェクトメンバー

株式会社ロフトワーク, FabCafe MTRLディレクター
柳原 一也

大阪府出身。2018年ロフトワークに入社し、翌年からMTRLに所属。大阪の編集プロダクションで情報誌や大学案内などの制作を行った後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科へ入学。身体性メディアプロジェクトに所属し、修士課程修了後リサーチャーとしてHaptic Design Projectの運営に携わる。プライベートでは大学院時代の友人と「GADARA」名義で自然物とテクノロジーの調和をテーマに制作活動を行っている。

株式会社ロフトワーク, MTRLプロデューサー / 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任研究員
小原和也(弁慶)

2015年ロフトワークに入社。素材/材料の新たな価値更新を目指したプラットフォーム「MTRL」の立上げメンバーとして運営に関わる。現在はプロデューサーとして、素材/材料基軸の企業向け企画、プロジェクト、新規事業の創出に携わる。モットーは 「人生はミスマッチ」。編著に『ファッションは更新できるのか?会議 人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想する』(フィルムアート社、2015)がある。あだ名は弁慶。

株式会社ロフトワーク, MTRL ディレクター
長島 絵未

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、広告制作会社にてディレクターとしてイベントやデジタルコンテンツの制作を担当。展示や体験型広告の企画を通じて、身体性をともなう「体験のデザイン」に一層関心を抱き、2016年ロフトワークに入社。デジタルコンテンツを通じて、ものや媒体を取り巻くホリスティックなデザインの可能性を探る。趣味はECサイト巡り。
https://loftwork.com/jp/people/emi_nagashima

パナソニック株式会社
Aug Lab

パナソニックは、ロボティクス技術が自動化(Automation)以外にもたらす新しい価値として、自己拡張(Augmentation)をテーマに、研究開発を行うための組織 「Aug Lab」を2019年4月に開設。「Aug Lab」の活動は、人はどのようなことにワクワクするのか、どのような状態になるとWell-beingになるかということを工学以外の視点も加えて研究しながら、デザイナー/クリエーターなどとの共創/プロトタイピングを通じて探索していきます。

パナソニック株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部, ロボティクス推進室 室長 / Aug Lab ダイレクター
安藤 健

早稲田大学理工学術院、大阪大学院医学系研究科での教員を経て、2011年パナソニック入社。現在、ロボティクス推進室室長Aug Lab ダイレクター。博士(工学)。人と社会、技術の関係性やWell-beingに興味を持ち、人を支えるロボティクスの要素研究から事業開発まで一貫して取り組む。専門は、ロボティクス、人間機械協調、生体計測など。経産省や学協会の各種委員も務め、IEEE、機械学会、ロボット学会など国内外での受賞多数。

GADARA, クリエイター / フリーランスデザイナー
竹腰 美夏

 GADARAで「自然のゆらぎ」をデザインの軸に、人とテクノロジーの関係性を探求するインタラクションにまつわる制作を行う。大学でプロダクトデザイン、大学院でインタラクションデザインと身体認知心理学に関して研究した後、企業でインスタレーションの制作、深層学習による画像処理の研究開発をした経験を活かし、IoTデバイスの筐体デザイン・機構設計や、AIを用いたアート表現等に取り組む。FabCafeクルーOG。