• Event Report

織物職人、クリエイター、サポーター。みんなで考え、話し、作る – YOSANO TEXTILE IDEATHON(アイデアソン)

異業種のクリエイターたちが与謝野町を訪れ、若手の織物職人とコラボレーションしながら、丹後ちりめんをはじめとする与謝野の「織り」の技術についてリサーチとプロトタイピング行う YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT

大寒波が襲来した2016年1月25日に、みんなで3月末に達成したいアイデアの原石を生み出す YOSANO TEXTILE IDEATHON を MTRL KYOTO(マテリアル京都)にて実施しました。

今回集まったのは与謝野町の若手織物職人である高松さん、羽賀さん、今井さん、由里さん。クリエイターは水野さん、浅野さん、吉行さん、高松さん、コナー。さらにこの日は、プロジェクトと丹後の織物の未来に関心を持って来ていただいた一般参加者(サポーター)12名も合流。みんなで考え、話し、作ってみるアイデアソン* を繰り広げました。
*特定のテーマに関心のある異分野の人達が集まって対話をしながら、あらたなアイデアやビジネスモデルを創出するワークショップの形式。 アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語。

YOSANO OPEN TEXTILE PROJECTとは

クリエイターが与謝野町を訪れ職人たちの機場をめぐったツアーの模様

たくさんの情報、素材、人とコミュニケーションしてテーマを絞り込む4時間

アイデアソンは約30名のみなさんと4時間に渡って繰り広げられました。

今回のアイデアソンの趣旨はこちら。

これらの目的を実現するために3つのプロセスを踏みます。

warm-up(アイデア出し準備)
職人さんとクリエイターの宿題を発表し合い、サポートメンバーにも徐々に情報をインプット。共有された内容をもとにアイデア出しのためのチームを作ります。

ideation(アイデア出し)
チームに分かれ、会場内の素材や道具を使いながら考えられそうなモノ・コトを「青天井」で発散します。生まれた数々のアイデアを全員で共有後、投票、カテゴライズを経て実制作チームを再編成します。

wrap-up(まとめ)
チームごとに3月末に向けてのゴールを設定し、具体的な道すじを立てていきます。最後に進め方、ネクストアクション、連絡方法を各チームごとにプレゼンテーションします。

チームを2回作ることでより多くの人コミュニケーションできる仕立てにし、アイデアの幅を広げつつ、いろんな知見を取り込んでブラッシュアップしていく形をとりました。時間が足りないー!という声はありつつも、限られた時間内でゴールと道すじを絞り込みました。

ここからは各プロセスの中で、特に印象的だった点を中心にご紹介します。

プロケッズのスニーカー愛が溢れ出る「マイ・フェイバリット紹介」

warm-upのプログラムの1つ、職人さんの「マイフェイバリット紹介」。自分を象徴する「超スキなモノ」を持参いただき、3分間プレゼンテーションいただくという内容で、目的は職人さんの「こだわりポイント」を共有し、アイデア出しにて色や質感などに変換しながら反映させることです。

中でも印象的だったのは羽賀さん。履いていたスニーカーをいきなり脱ぎ出し、放った第一声は「プロケッズのスニーカーがめちゃくちゃ好きです」。物心ついた時から十数年、履きつぶしては購入を繰り返すプロケッズ愛(履き心地、ゴムソールの形状、存在感など)は尋常ではなく、技巧派である羽賀さんの没頭力が随所に見えるプレゼンテーションでした。

その他、由里さんはバイクとビリヤード、高岡さんは物を作る人と音楽、今井さんは写真と人狼、原田さんはパンと旅、とそれぞれのこだわりを存分に話していただきました。

クリエイターによるデモを駆使した「宿題発表」

職人さんへのアンサープレゼンテーションとして、クリエイターが1/14-15のツアーで得たインプットをもとに宿題を発表。「現場にいってどう思ったか(ニーズの理解)」「自分なら何が提案できそうか(シーズの提案)」という2軸で話し、その場でシーズニーズマトリクス*を作成します。

*シーズニーズマトリクスは、縦軸と横軸の組み合わせで強制的にアイデアを発想していく方法。

4者4様の独特の視点がとてもユニークでしたが、中でも印象的だったのは高松さんとコナー。自分の得意分野を活かし、短期間の間にシーズの提案としてデモを準備。

高松さんは「道具、Fab」の話を中心にデジタルと織を組み合わせて、例えば紋紙のパンチ穴をデジタル制御で任意かつスピーディに変えられないか提案。

コナーは現地で録音した織機の音をプロセッシングと組み合わせた「音の可視化」提案を実際にデモで行いました。また、ちりめんをケブラ等の異素材とミックスして何かできないか、という話も合わせて提案。

浅野さんは「仕組みの転換」、吉行さんは「構造・実験」の提案。内容は後半のアイデアソンの展開と合わせてご紹介します。

それぞれの発表を聞いた後は、会場全員で「どのテーマで一緒に考えてみたいか」を応募。4チームに分かれたところでいよいよアイデア出しに移ります。

レジ袋をあぶる?パンを糸に?作りながら考える「アイディエーション」

まず最初に監修ディレクターである水野さんより、今回のアイデアソンのポイントを3つ。

  1. 会場内をウロウロすること
  2. どんどんカタチにしてみること
  3. 職人さんの「超好きなモノ」を反映すること

会場には、与謝野町より持参いただいた生地や織機パーツなどを配置した「与謝野テーブル」、木っ端や毛糸を始め加工用の道具などを配置した「マテリアルテーブル」を設置してあり、水野さんが語る 1〜3 のポイントを反映しやすく、より活発なディスカッションができる空間設計にしました。

それぞれのチームで自己紹介をしつつ、約1時間のアイディエーションはスタート。
アイディエーションの様子は一気にムービーでどうぞ!

https://youtu.be/0I0pG6mlMcM

4チームがそれぞれの方法でアイデアを展開しました。

シーズニーズマトリクスをもとに付箋を駆使してアイデアを出し続けるチーム、織物のサンプルをもとに構造を徹底的にリサーチしながらアイデアを詰めていくチーム…

それぞれにアプローチは違いましたが、面白かったのは吉行さんのチーム。レジ袋を複数人で引っ張ってみたり、ぽたぽた焼きの袋をライターであぶってみたり、パンを裂いて織の構造を再現してみたりなど、考えながら手を動かすさまは、外から見ていてもとても楽しそうで、具現化する、可視化する重要性に改めて気づかされました。

「終了!」

制限時間内で生まれたアイデアを床にずらっと並べました。

青天井のアイデアから一気に収束へ向かう「ラップアップ」

アイディエーションで発散したアイデアの種は様々。

中でもシーズニーズマトリクスを上手く活用しながらアイデアを作った浅野さんチームの提案は数も多く、どれも魅力的。蚕を軸にした工房やセラピー、織機や道具のシェアや販売方法の変化など、現在の「仕組み」を多角度から捉えていくアイデアが印象的でした。

それぞれのチームのポストが終わった後は、みなで投票。投票が終わったら、似たアイデアをグルーピングしラベルをつけていきます。

こうして、最終的に絞られたアイデアに対して製作チームを3つに再編成します。

3つに再編成された後はそれぞれのチームで、3月末に向けてのゴールと具体的な道筋を立てていきます。

最終的に各チームよりプレゼンテーション。

まず吉行さんと高岡さんを中心にした「(イ)レギュラー」チームの発表。

チームA:(イ)レギュラーからみえてくるもの

キーワード パンと蚕の共通点、構造部を取り去る、ハードコアなぽたぽた
織物職人 高岡さん
クリエイター プロダクトデザイナー吉行さん
サポーター 原田さん/井上さん/小高さん/堤さん/谷さん
次のアクション まずは個々の実験をし、それぞれの実験が序所に影響しあうように
最後与謝野町で着地していくイメージの流れを少しづつ入れていく
「できそう」「やってみよう」とみんなに思ってもらうことが目標
その積み重ねで最終、色形へ持っていく

次に浅野さん、羽賀さん、今井さんを中心にした「パターン/リズム」チームの発表。

チームB: パターン/リズム

キーワード 形、リズム、ゲーム、時計、タイムラプス、スーパースロー
職人 羽賀さん/今井さん
クリエイター デザインリサーチャー浅野さん
サポーター 田根さん
次のアクション 浅野さんが1日1パターンの実験を行う
羽賀さん、今井さんが日常を切り取った写真とコメントをアップ
当たり前に行われてきた工程のパターンを意識的に見る
その上で改変箇所を探っていく

そして高松さん、由里さんによる「デジタルと織り」チームの発表。

チームC:デジタルと織り

キーワード レーザー縫製、紋紙のパーソナライズ、蚕 lab、織機実験、道具
職人 由里さん
クリエイター Fabディレクター高松さん/デザイナー コナーさん
サポーター 掛札さん/三谷さん/深地さん/中島さん
次のアクション 織機の構造把握をするべく由里さんと一緒に進める
fabツールを使った織機機構の一部再現を行う
音などの近く情報を用いた工場・織機のVR体験の実験を行う
Arudinoなどのマイコンを織機と組み合わせる実験を行う
実験の結果を共有し、意見交換し、面白そうなものを掘り下げる

最後に水野さんより、「限られた時間の中で、チームメンバーで活発にコミュニケーションし、できることを実際に試していくことが重要。うまくまとめるのではなく、ラディカルに考えていくことを目指してほしい」と、熱いメッセージで締めくくりました。

次の目標は2月の中間報告会。それに向けて、各チームがオンラインでコミュにk−ションをとり実験を繰り返しながら、アウトプットに向けてどんどん試作を進めていきます。

みんなで考えた与謝野の「織り」

最後に、この日一般参加で来ていただいた方々に、当プロジェクトや丹後の織物についての感想とメッセージをいただきました。

YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT に関わっていただいたサポーターのからのメッセージは こちらで順次公開いたします。

それでは、次回の活動レポートもお楽しみに!

最新の記事一覧