自ら素材を選び、デザインする。靴 / フットウェア製品の新しい選択肢 『Pre-Fab Footwear』

Proef『Loper』× FabCafe & MTRL

プロジェクト概要

2019年、FabCafe Tokyo / Kyoto  にて、靴づくりのワークショップ『Pre-Fab Footwear #世界に一足のサンダルをつくる』が連続開催されました。MTRLに設置されるマテリアルも活用しながら、デザインスタジオ proef が企画開発したフットウェア制作キット「Loper(ローパー)」を用いて、参加された方々それぞれがオリジナルのデザインでストラップサンダルを制作。今後も、Proef × FabCafe & MTRL  のコラボレーションプロジェクトとして展開を予定しています。

実施内容
・プログラム設計
・マテリアル選定
・ワークショップ運営

実施体制
・MTRL ディレクター: 大西陽(MTRL / mi-cuit
・ワークショップ運営:志治寛之、川原田昌徳(FabCafe Tokyo
・ゲストクリエイター:田沼 英治、五十嵐勝大 (proef

期間
・2019年〜

ユニークな素材と靴の制作が出会う「Pre-Fab Footwear」

「Pre-Fab Footwear」では、MTRLに集まるユニークな素材たちも靴づくりに用いることができます。 素材を切り出し、伸ばしたり曲げたりしながら試行錯誤する時間は、「素材に実際に触りながらその機能や質感をどのように活かすか実験する」という過程でもありました。

本記事では、本プロジェクトをご紹介するとともに、京都初開催となった2019年6月のワークショップの過程で見えてきた「適量生産を可能にするプロダクトデザインとマテリアルの関係性」についてレポートします。

(当日の制作風景と完成したサンダルの写真を flickr で公開しています。制作過程や完成品をご覧になりたい方はぜひあわせてどうぞ。)

特別なマテリアル

京都編では下記の素材がフィーチャーされました。

ウルトラスエード®

感性に訴えかける上質でなめらかな風合い。
その美しさに秘められた高度な品質と機能性。

Ultrasuede®は、ジャパン・クオリティの先端素材として、東レがグローバルに展開するスエード調人工皮革です。1970年、東レは世界初の海島型極細繊維技術による不織布構造の画期的な素材を開発。
以来、技術革新を繰り返し、ファッションやインテリアのみならず、自動車や航空機の内装、スポーツギア、スマートフォンやモバイル機器のアクセサリーなど、最先端のアプリケーションに対応する高感度・高機能マテリアルとして選ばれ続けています。
現在、ポリマー・リサイクルシステムの導入、植物由来ポリマーへの移行など環境負荷低減に積極的に取り組み、責任ある製品づくりを通じて持続可能な社会の実現を目指しています。

Ultrasuede®は、未来の「美しき可能性」に向けて進化する素材です。

東レ株式会社 : http://www.ultrasuede.jp/

(*Pre-Fab Footwear #世界に一足のサンダルをつくるイベントページより引用)

革友禅

友禅染の技法を布ではなく革に施す独自の染色技法で図柄を染めつけるとともに、着色部分を意図的に縮ませ柄にあわせた凹凸を与える「革友禅」。製造業が集まる“ものづくりのまち”大阪市生野でつくられる、新しい皮革素材です。見る角度によって変化する革の表情と、軽く柔らかな手触り。色落ちしないため、革なのに洗える。従来の皮革の概念を越えた応用の可能性を秘めた素材です。

革友禅専門店 自分屋

(*MTRL WEBより引用)

Fiber Upcycled Material

中古衣料を始め、ウェス、反毛など、素材分別が難しいことから、毎年大量に廃棄されるうち約80%が焼却処分となる廃棄繊維。Fiber Upcycled Materialは、この廃棄繊維を「色」で分別し、それを原材料として元の色や繊維の特性による付加価値を与えアップサイクルした新素材。成形加工業、故繊維業、素材メーカー、公的研究機関の技術者、デザイナー等がネットワークを組んで、廃棄繊維から付加価値のあるプロダクトを生み出す「Colour Recycle Network」が開発しました。繊維の量や、色相環に基づく色の配合をコントロールすることで、質感や色合いを変化させることができます。

Coulor Recycle Network

(*MTRL WEBより引用)

『Loper』による靴製造システムのリデザイン

従来、靴は製造工程が複雑なために、製品化に際しては、「職人技」や「専門的な工作機械」が不可欠でした。「Loper」は独自開発による、接着剤の代わりにロープを用いて手で組み立てることができる仕組みを採用し、それらなしでも本格的な靴をつくることを可能にしています。

また、「Loper」の優れた点は、ユニークで美しい靴をつくることができることのみならず、「サスティナブルな靴作りのシステム」を構築していることにあります。

「Loper」の特徴的な要素

① 靴職人の健康を守る
従来の靴製造では、吸引した際に毒性のある接着剤を用いられる工程がありました。接着剤の不使用により、職人の健康に配慮した安全な製造環境を実現します。

② 適量生産を可能にする
特別な設備を必要とせず、ひとりでも短時間で組み立てられる。設備投資と人件費のコストを抑えることで、オンデマンドでの製造、販売が可能になります。

③ エシカルな靴ビジネスを生み出す
シンプルな工程により、世界のどこでも各地域ごとの素材を用いてその地域の人を雇用し製造、提供する柔軟なつくり方・働き方を促進します。また、大規模工場が不要で、物流コストを抑えられることで環境負荷軽減にも貢献します。

(*LoperのオフィシャルWebサイトに、コンセプトと工程についての詳しい説明が掲載されていますので、ぜひあわせてご覧ください。)

基本構造を理解すれば、パーツの選び方やデザインを工夫する自由度も高く、オリジナルの靴を必要な数だけ製造することができるシステム。大量生産の仕組みに依存しないこの「Loper」をプラットフォームにすることで、「ロスのリスクを減らし、多色展開する」「従来は靴に用いなかった素材も靴として製品化可能にする」「製造ラインを変えずに別の素材を使用する」など、様々な素材にとっても新たな活用、展開が期待できるのではないでしょうか。

 

▼ 京都編での完成作品たち

Members

「誰もが靴が作れる世界を作る」を目標に6年の構想とキットの開発までに1年をかけ、2018年末に発表。伝統的なレザークラフトと、ストリート感覚のスニーカーを組み合わせたユニセックスシューズとなっており、高品質なレザーのアッパーと、フットベッド、耐久性に優れたラバーソールを、ローパー構造によって組み立て、はき心地と汎用性を実現。靴製造の背景に隠れた根深い問題の解決やLoperを通して全ての子供たちが靴作りを経験できるようにすることを目標としています。

Loper : http://proefdesigns.com/lopershoeskit.html
Instagram : https://www.instagram.com/loper_shoes/

 

proef

proef ってなに
proefは、プロダクトブランドです。proefにとってデザインすることは、ものの見た目を考える事だけではなく、新しいものの作り方を考え、それを生産する方法、商品を人に届けていく最良の方法を見つける思考のプロセス全体だと考えています。すべてのプロジェクトのカテゴリーはそれぞれのコンセプトやアプローチ方法によって様々です。

proefがしたいこと
つくり方から考える事により、プロダクトの生産背景とデザインの可能性を見つけ出すと同時に、そのプロセスを経て、時代とともに変化する「あたらしいけど、ふつうなもの」を探しています。 また、その地域で丁寧に製造された素材を利用し、手頃な価格で提供出来るデザインを考える事で、社会と、それを身につける人々の関係性が、より自然で持続可能なものになることを願っています。

proefのみらい
proefにとって、デザイン活動とは、種を作る事です。このデザインの種を、文化や、言語が違う人々が生活する場所に植えます。その違いにより生まれる収穫(喜び)を共に楽しむ事で、ローカルで、グローバルなビジネス展開を目指します。。

web : http://proefdesigns.com/

企画
mi-cuit

mi-cuitとはフランス語で「半熟 / 半生」という調理用語。

食材を半熟で調理すると、
そこには隠れた食材の旨味や組み合わせに余白がみえてくる。
創造されたデザインも未完成品として捉えることで、
新しい視点の発見や次の創造の素材として捉え直すことができる。

mi-cuitは、そんな現代社会における多様構造化したアイディアに対して、
分野やヒエラルキーの枠組みを超えた変化自在なリゾーム型組織を形成し、
アイディアの新陳代謝を促すエコシステムを構築しています

mi-cuit : http://mi-cuit.com

FabCafe Tokyo, バリスタ / シューデザイナー
志治寛之

靴の機能性、フォルムや革の美しさに惹かれ2018年ヒコみづのジュエリーカレッジシューメーカーコースに入学。その傍ら、REGAL SHOESでフィッティングを学び、多くの方が自分の足に合っていない靴を履いていることを知る。

proefが開発した『Loper』のコンセプトとパターンを調整し、各々がデザインすることで足に合った世界にひとつだけの靴が作れる点に共感。現在、アンバサダーとして、ワークショップを担当する。姪っ子と遊ぶのが最近の生き甲斐。

FabCafe Tokyo, バリスタ / デザイナー
川原田昌徳

スターウォーズのロボットの義手に憧れ、大学では生命理工学を専攻。最近は表情で操作できるインターフェースを開発中。 Fabスピリットに感銘を受け、バリスタとしてFabCafeに加わる。

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