- Event Report
Material Meetup TOKYO vol.03 レポート
第3回のMaterial Meetup TOKYOのテーマは「構造と強度」です。今回はいったいどんな心ときめく素材が待ち受けているのでしょう。当日のイベントの様子をレポートいたします。
開催概要:Material Meetup TOKYO vol.03 「構造と強度」
Material Meetup TOKYO とは?
素材が生まれた背景や現在の形に至るまでの経緯や特性など素材のもつ魅力を踏まえた上で、実際に素材に触れながら、従来とは違う扱い方を探求したり、素材の新しい価値を考えたり。Material Meetup TOKYOは、売り手であるメーカーと、作り手であるクリエイターやデザイナーが一緒になって素材の魅力を隅から隅まで見つけ出す、「素材の魅力を語り尽くすイベントです」なイベントです。
オーガナイザーは、MTRL TOKYO プロデューサーの小原和也(弁慶)と、ふしぎデザイン代表の秋山慶太さん。
まな板にのせられた素材たちをさばいていきます。
vol.03「構造と強度」おしながき(登壇トピックス)
AGC株式会社 協創プロジェクト「SILICA」
クリエイターコラボレーション展示「ANIMATED」
北野悠基さん、河合洋平さん
3Dプリントを最大限活用するための新しい設計手法「DfAM」によって製造業のR&Dを支援する
(株式会社3D Printing Corporation)
古賀洋一郎さん
産業用重量梱包材世界No.1 強化ダンボール
「トライウォール 」(トライウォールジャパン株式会社)
岡本充弘さん
錆を美しい意匠に昇華させた耐候性鋼
「ARTSTEEL」(株式会社フロント)
藤井将之さん
素材の紹介ピッチ
素材の紹介タイムでは、素材に関するエピソードやコンセプト、こだわり、素材のこれからの可能性などを、メーカーの方や主催者だけでなく作り手のクリエイターも一緒になって吟味します。
市場の変化に応じて
[ Case: 01 ]
さまざまなソリューションに:「トライウォール」
世界一強力な産業用重量梱包材、「トライウォール」。元は軍事物資輸送用に開発されたダンボールでした。高い強度を持ち、かつ持続生産可能な素材を使用した環境性能の高いダンボールです。現在ではその魅力的な特性を活かし、お客様のニーズや市場の変化に応じて様々な形に変化してきました。
トライウォールを使用した棚や椅子などを展開する「Danbaul × Style」は、軽量で強度がある特性を生かして、特殊な道具を使わずに簡単に組み立てることができる家具のブランドです。また、棺桶にトライウォールを使用した「Altana×Style」という製品も展開し、多様化する現代に想いを残し伝え、環境にも優しい葬送のあり方を提案しています。他にも、色を塗ったり印刷することが可能であるという特性を活かし、アート作品に使用される例も。「トライウォールの好きなところは『創造的なところ』」と答える岡本さん。このMeetupからは、この素材からいったいどんなソリューションが生まれてくるのでしょう?
[ Case: 02 ]
第四次製造変革のきっかけに:「MarkTwo」
カーボン材を使用することで、軽くて金属並みの強度を出すことを可能にした3Dプリンタ「MarkTwo」。従来、鉄鋼を用いて実現するしかなかった試作を、鉄鋼に近い、または同程度の強度かつ高精度に実現し、破格の200万円台で購入できる手軽さを兼ね備えた3Dプリンタです。(手軽といっても、かなりの値段ですが。)
第4次産業革命を起こす技術のひとつと言われている3Dプリンタ。第3次産業革命の代表とも言われるインターネットが10年で急速的に発展したように、3Dプリンタもこれからますます発展していくでしょう。しかし、インターネットと同様の革命はどうすれば起こるのでしょうか?「近年あらゆるものがインフラ化しています。そんな中、次にインフラ化するものは『製造力』ではないかと考えています。そして、それを実現するのが私たちのプロジェクトなのです。」と古賀さんは語ります。10年後には一家に一台3Dプリンタがあって、家中のあらゆるものが個人の手によって作られ、自給自足できる生活が当たり前になっているかもしれませんね。
[ Case: 03 ]
こだわりぬいた鉄の美しさ:「ARTSTEEL」サビでサビを制し、そのサビを職人の技術によって意匠にまで高めることで非常に強く美しい素材へと昇華させた耐候性鋼「ARTSTEEL」。こちらの素材は京王吉祥寺駅の壁面をはじめとする多くの建築物から始まり、門扉、フェンス、看板、玄関ドア、テーブルなどの家具にまで、あらゆるものへ使用用途を広げています。
もともとネガティブに捉えられてしまっていたサビ。しかし、近年はヴィンテージ感のあるものやムラがあるものが好まれたり、自然素材と相性のいいものが良しとされるなど、市場で求められるものが変化しています。そんな市場の変化に柔軟に対応し、美しさに限界までこだわることで、ARTSTEELは錆びていても、錆びているからこそ美しいと評される素材へと変化しました。鉄の美に対し真摯に向き合ったことで生まれた素材です。
[ Case: 04 ]
新たな価値の創造:協創プロジェクト「SILICA」AGC株式会社が考える協創のあり方を実現した展示企画「ANIMATED」。本展示では、ガラスの常識を覆すような作品が生み出されました。「舞うガラス」や「踊るガラス」、「漂うガラス」など、まるで生きているかのような、不思議で繊細なガラス。ついつい時間を忘れて見入ってしまうような、そんな神秘的な魅力を内に秘めています。
元々は、「自前主義」と自らを表するような社内主導の開発を行っていたAGCは、2018年に協創プロジェクト「SILICA」を立ち上げました。そして、そのプロジェクトでクリエイターとコラボレーションした成果を展示したのが「ANIMATED」展です。アートやデザインの分野とのコラボレーションによりガラスの新しい使い方のチャレンジを重ねたプロトタイプを展示。従来とは異なるガラスの魅力や価値の訴求からお客様を惹きつけ、新たなビジネス創出を目指しています。
「人を癒すガラスを作りたい」と語る河合さん。ガラスという素材には、その透き通った内面に未だ見ぬあらゆる可能性を秘めていそうですね。
平成最後のMaterial Meetup TOKYO
いかがでしたでしょうか?前回、前々回に引き続き、おかげさまで今回も満員御礼となりました。
第3回 Material Meetup TOKYO のテーマは「構造と強度」。今回の4種の素材はいずれも、構造・強度を変化させたり、あるいは見せ方を変えることで、人を惹きつける素材へと進化してきました。従来の固定概念から脱し、柔軟性を持つことで市場のニーズに対応してきたのです。
第三次産業革命という目まぐるしい変化の真っ只中を駆け抜け、第四次産業へ突入した平成。そんな平成にもいよいよ幕が降りようとしています。この時代のマテリアルが柔らかさを持つことで魅力的な素材へと変貌してきたように、次の時代にも柔らかく、心惹かれるような素材が生まれるのでしょうか。
新時代のマテリアルにも乞うご期待!