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茶の湯文化と現代の素材・テクノロジーのクロスオーバーを試みる。『激陶者集団へうげ十作展「俺たちの京都」 – へうげ de マテリアル』レポート

本記事は、2018年5月25日〜5月28日の4日間、MTRL KYOTOで開催されたイベント『激陶者集団へうげ十作展「俺たちの京都」 – へうげ de マテリアル』のレポートです。(text : 木下 浩佑 [MTRL KYOTO])

漫画『へうげもの』公式スピンオフイベント

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戦国時代の武将にして茶人、古田織部を主人公にした漫画『へうげもの』(山田芳裕/講談社)の公式スピンオフイベント。普遍的な人の欲や業の肯定、そして「面白がる」視線とスピリットへのリスペクトなど、現代のクリエイションにも深く通じる「へうげもの」の世界観に共鳴する若手工芸作家による展覧会 “激陶者集団へうげ十作展「俺たちの京都」” が、2018年5月25日〜5月28日の4日間、MTRL KYOTOを舞台に開催されました(主催:白白庵)。

会期中は、陶芸家をはじめとする「へうげ十作」の作品展示に加えて、ワークショップやトークなどのプログラムを実施。また、伝統/革新の枠を超えて素材やテクノロジーが交錯するMTRL KYOTOならではの招待枠も設けられ、実験的なコラボレーションを展開しました。

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▲展示会場の風景(出典作家一覧は、イベントページよりご覧いただけます)

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▲出典作家たちによるワークショップの様子(作家・ワークショップ詳細はこちらから)


〜へうげの道は京(みやこ)より続く〜

惜しまれつつも昨年連載が終了し、今なお多くの熱烈な支持者から称賛の声が止まない漫画『へうげもの』。
歴史に埋もれていた武将茶人・古田織部の生涯だけでなく、信長~秀吉~家康の天下と共に変遷する時代の美意識、千利休を筆頭に茶の湯の文化がどのように発展し、人々に影響を与えたかを描き切った作者・山田芳裕の功績は大きい。戦乱の世の中においても美(数奇)が人の心を強烈に刺激し、「武か数奇か」と自問自答する主人公・織部の心の揺れ動きは、普遍的な問題提起を現代の世にも行っているのではなかろうか。
そんな漫画のストーリーから少なからず影響を受けた現代の陶芸作家をはじめとする越境的クリエイティブ集団こそが、漫画編集担当が直々に声をかけて呼び寄せた「激陶者集団へうげ十作」である。
千利休の提唱した「侘び」のミニマリズムに対抗し、織部が打ち出した「へうげ」は自由闊達で融通無碍なカウンターカルチャーとして一世を風靡し、今の世にも軽妙かつ自由な気風を伝えてくれる。翻って現在、コンセプトありきのものづくりやあらゆるカテゴリー・ジャンル分けが徹底される風潮の中で、束縛よりも自在を是としクロスオーバーな活躍を見せる越境的な表現者たち。それぞれがユニークなバックボーンやストーリーを持ち、全国各地で独創的かつ見過ごせない作品を日々作り続けている。

2008年に発足し、足掛け10年にわたり各地で展覧会イベント、茶会など各種催しで話題と笑いを提供してきた「へうげ十作」も、連載終了後に新たなステージへ突入しようとしている。その足掛かりとなるのが、漫画のストーリー上でも華やかな文化の中心地として描かれた京都。ここは古くからのものが多く継承されているだけでなく、実は学術研究・文化創造において日本一の先端性を誇ると言っても過言では無い、ラディカルかつクリエイティブな街でもあるのだ。過去に京都での十作展は、たち吉本店「へうげもの展」(2009)、アートフェア京都(2011)・アート京都(2012)でのブース出展に続き4回目となる。

その京都において最先端のテクノロジーを取り入れ、ソフト・ハード問わずアイデアを持ち寄る場として熱い注目を集めているのが、MTRL KYOTO。その名の通りマテリアル(素材)をキーワードに様々な実験的イベントやトークショー、ワークショップなどが連日行われる、新たなものづくりのメッカである。そんなMTRL KYOTOにおいて、漫画『へうげもの』から今の世に投げかけられた「へうげ」がクリエイター達にどのように作用し、影響し、形を変えながらもマインドが受け継がれて行くのか。それを「へうげ十作」と共に検証していくのが、今企画の趣旨である。

白白庵 石橋圭吾

▲『激陶者集団へうげ十作展「俺たちの京都」 – へうげ de マテリアル』主催者からのイベント主旨文



茶の湯文化と現代の素材・テクノロジーのクロスオーバーを試みる実験

今回の展示に際して、MTRL KYOTOでは、「これまで “茶の湯” 文化と直接的に接続してこなかったテクノロジー・クリエイションとの出会い」という視点から、複数のクリエイターとのコラボレーション企画を実施しました。

コラボレーション(1) Haptic茶道体験

「茶会」を、非言語的 / 身体的なコミュニケーションの実践の場と捉えた、”触覚”をデザインするプロジェクト Haptic Designと茶人 松村宗亮さんのコラボレーションによる、その名も「Haptic茶道」を実施。今回のイベントをきっかけに、名古屋工業大学大学院工学研究科准教授の田中由浩先生に触覚共有デバイスを開発いただき、「茶人が点てるお茶の振る舞い/触覚を共有する」試みを行いました。詳細がこちらに公開されていますので、ぜひあわせてご覧ください

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▼Special Thanks(敬称略)

[茶人]
松村宗亮

[「Haptic 茶道体験」 開発メンバー]
田中由浩(名古屋工業大学大学院工学研究科准教授)
飯島渉太(名古屋工業大学大学院博士前期課程学生)
金子真弓(一般社団法人T.M.C.N 理事)
小原和也(株式会社ロフトワーク FabCafe MTRL)

私たちは、日々の生活の中で、様々な人やモノと触れ合い、私たちの身体に遍在する「触覚」を通じて無意識的に様々な関係性を築いています。私たちの生活を取り囲む「視覚」「聴覚」のデザインと同様に、「触覚(Haptic)」をデザインすることによって、素材のさわり心地や、情報の伝達にとどまらず、人やモノとの身体を通じた関係性をデザインすることができます。
そんな「触覚デザイン(Haptic Design)」という考え方に基づき、「Haptic 茶道体験」ではより茶道の体験を身体的に、触覚的に共有できることを目指しました。
茶道では、その空間を共にし、その場に流れる雰囲気や物語を共有し、緊張や緩和含め、そのひとときを楽しむものですが、「Haptic 茶道体験」は茶人の「ふるまい」を身体で感じることで、茶道体感をアップデートする試みです。
今回体験で使用する触覚デバイスは、触覚研究により、人々の幸福度の向上をめざす取り組みに従事している名古屋工業大学大学院工学研究科の田中由浩研究室協力のもと、実際に茶道の体験中に茶人の人とともに身につける「触覚リング(仮)」を開発しました。このリングを装着することによって、茶人のふるまいから生じる「触覚」を体験することが可能です。


コラボレーション(2) ろくろパフォーマンス x リアルタイムオーディオビジュアル

出展作家のひとり、芸術家/陶芸家の金理有さんと、オーディオビジュアルによるデジタルインタラクションを得意とする「SPEKTRA」がコラボレーション。ろくろにセンサーを設置し、金さんのろくろでの造形にあわせて、センシングした動きや形状のデータから、「土の形状の変化 → 映像(ビジュアル)」 「ろくろの回転 → 音楽とビート(オーディオ)」のそれぞれをリアルタイムに生成しました。アーティストの制作プロセスの身体性からあらたな映像表現をつくりだすこの実験は、デジタルテクノロジーを用いた新たな身体表現の可能性を予感させるものとなりました。

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▼Special Thanks(敬称略)

[ろくろパフォーマンス]
金理有(芸術家/陶芸家)

[オーディオビジュアル 協力]
Visual : Masaru Nakanishi (SPEKTRA)
Sound : Yuto Horita (SPEKTRA)
Produce : Kousei Ikeda (SPEKTRA)


コラボレーション(3) ホロレンズ茶室

MR(複合現実)デバイス「Microsoft HoloLens(ホロレンズ)」を館内に設置し、3Dデータのヴァーチャルな茶室を目の前に浮かび上がらせます。ヴァーチャル茶室は、『Studio仕組』により、千利休が手がけた二畳間の茶室「待庵(たいあん) ※国宝」の空間を模して設計された組み立て式茶室「瑞心居(ずいしんきょ)」を、『K.Tea’s Lab』が3Dデータ化。実際は何もない空間ですが、ホロレンズを装着した人だけが、そこにある茶室を外から眺めたり中に入って設えをみたりすることができます。

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▼Special Thanks(敬称略)
[ホロレンズ茶室体験 企画・運営]
高橋浩二 (HoloLab/K.Tea’s Lab)

[茶室データ協力]
Studio仕組



コラボレーション(4) 新しい素材とテクノロジーから考える、日本的照明のスタディ

エレファンテック株式会社による「回路を描く / プリントできる素材・テクノロジー」に着目した実験作品を展示。同社のデザイナーでありながら、アーティストとしても活動する綱田康平さんが手がけた照明のプロトタイピング「Case Study Lamp」シリーズの新作を展示しました。照明部分の本体には、インクジェットプリント+銅めっき加工によるFPC製造技術「P-Flex™️」* を用いた厚さ0.1mm以下のLED照明を用いています。障子や提灯など日本の「灯り(あかり)」の在り方にインスパイアされた照明は、画材としての導電性インクのテクスチャや伝統的なモチーフが生み出すビジュアルもあいまって、最新のテクノロジーを用いて日本的な照明の新たな可能性を探る実験の機会となりました。

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▼Special Thanks(敬称略)
[制作]
綱田康平(デザイナー / アーティスト)

[協力]
エレファンテック株式会社

*作品「Case Study Lamp #04」は、会期終了後も引き続きMTRL KYOTO館内に展示しています。
*「P-Flex™️」の詳細については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

エレファンテック株式会社では、進歩する社内技術に合わせて照明のプロトタイピング「Case Study Lamp」を随時製作してきました。その4作目となる#04は、インクジェットプリント+銅めっき加工によるFPC製造技術「P-Flex™️」を用いた厚さ0.1mm以下のLED照明です。更にレジスト(保護層)のカラーバリエーションを展開した最新の試作になります。また電子回路製造に用いる導電性銀ナノインクは、銀泥のようなテクスチャの美しさがあります。それを用いて、ランプシェードに大和絵の普遍的なモチーフである四季の草花をドローイングしました。最新の技術・マテリアルを様々な視点で捉え、日本的な風趣に落とし込んだプロダクトを展示します。


コラボレーション(5) 異素材を「花器」にみたてる、クリエイターユニットの実験

“コンプレックスと欠損”をテーマにMTRL KYOTOを拠点として制作を行う革屋、壁屋、花屋、足つぼ師、舞台作家の異種混淆デザインチーム「清濁アセンブル」が、従来は花器として用いられることのない「皮革」「セメント建材」と植物を組み合わせ、言葉とともに展示する試みを行いました。茶の湯における「見立て」によって素材に新たな解釈と使用シーンをもたらす仕掛けは、独特な風貌のオブジェクトとして空間のなかで目立ちながらも調和するという効果をもたらしました。

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▼Special Thanks(敬称略)
[制作]
清濁アセンブル

*作品「壁、花、革、言葉を掛け合わせた清濁作品群」は、会期終了後も引き続きMTRL KYOTO館内に展示しています。



他にも、会場に訪れてくださったことから急遽体験ブースを設けることになった「バーチャルろくろシステム Roquro[ロクロ]」を、出典作家さんからイベントのお客さままで随時楽しんだりと、デジタル / アナログ、伝統 / 革新の垣根を超えた出会いが沢山生まれる時間となりました。
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MTRL KYOTOでは、今後も、素材・テクノロジーとクリエイションの融合によって新たな価値・文脈を生み出す実験を行なっていきます。今後の企画にも、どうぞご期待ください。

ブログ筆者

木下 浩佑(MTRL KYOTO・FabCafe Kyoto マネージャー)
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京都のカフェ「neutron」・東京のアートギャラリー「neutron tokyo」にマネージャーとして勤務したのち、廃校活用施設「IID 世田谷ものづくり学校」ではクリエイターのワークショップや展示、企業や学校・自治体とのコラボレーション、Fabスペースの立ち上げなど館内企画を担当。2015年より株式会社ロフトワークにジョインし、クリエイティブラウンジ「MTRL KYOTO」では立ち上げフェーズから継続して店舗サービスのマネジメントと企画に携わる。2017年6月には、MTRL KYOTO 1階に「FabCafe Kyoto」をオープン。地域や専門領域を超えて交流や創発を促す”媒介”であることをモットーに活動中。
https://mtrl.com/kyoto/
https://fabcafe.com/kyoto/

コラボレーション大歓迎!

MTRL / ロフトワークでは、さまざまな素材・テクノロジーと文化の出会いから新しい価値を生み出す企画を、コンセプトメイクから制作ディレクションまで行なっています。ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

■ 株式会社ロフトワーク https://loftwork.com/jp/
■ MTRL https://mtrl.com/ 

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