• Project Report

端材を取り巻く「物語」をデザインし「次に継ぐ」、 人造大理石端材を活用したプロトタイプ制作

Outline

“素材が生まれる背景”と”その素材の持つ特性”に寄り添い、端材の次の人生をデザインする。

素材起点のイノベーティブなプロジェクトを多く手掛けるMTRL(運営:株式会社ロフトワーク)と体験価値の創造を通じて、企業・団体のコミュニケーションをデザインする株式会社博展(以下、HAKUTEN)で、「素材起点のものづくり」を推進していく”素材大喜利集団”「CURARI-ZA(くらり座)」を立ち上げました。

CURARI-ZAの活動の第一弾としてシステムキッチンの天板などに使用される”人造大理石”の端材を活用したプロトタイプを制作しました。
キッチンの天板を製造する過程において、1枚の板からシンクやコンロの部分を切り出すことで、端材を生み出してしまいます。また、生み出された端材は再資源化の難易度も高く、多くは捨てられてしまうという現状があります。

今回、CURARI-ZAはそんな人造大理石の端材を題材として、
制作のプロセスの中で以下、3つのことを重視し、次に継いでいくためのプロトタイプをデザインしました。

Approach

①端材から端材を生まないデザイン

1枚の板を余すことなく使って、植栽ポットとペンダントライトを制作した。

人造大理石の端材は、生産過程で特徴的な形の角がついた一枚の板として生まれます。この角を切り落とすことで使いやすくするのは簡単ですが、これではさらに新たな端材を生み出してしまいます。
そこで、私たちは1枚の板を余すことなく使い切ることを制約にしデザインしました。

②素材の生まれる背景、素材の持つ独自の特性をリサーチし制作物を決める

背景のリサーチ
端材がどのようにして生まれるのか、その背景にはどんな要因があるのかを考えてみました。一般的に、端材が生まれることはネガティブなことと捉えられがちですが、今回取り上げる素材は「家をつくる」「リフォームする」といった人々のポジティブな営みの中で生まれるものという事に気づきました。

素材の特性のリサーチ
合わせて人造大理石の物性もリサーチし、その特性にフォーカスした制作を進めることにしました。今回の制作では、以下の素材の特性を最大限にアピールし、素材自体に寄り添ったものづくりを実践しました。

1.特徴的な形をした四辺の角
システムキッチンを作る際のカット工程で生まれる端材の四辺には、独特の形状の角が見られます。この角の形状は、端材のストーリーを伝えるため特徴的だと考え、これらの形状を活かすことにしました。

2.大理石にはない樹脂素材ならではの2つの特徴

  • 光を透過させる特性
    • 大理石にはない特徴として、人造大理石は樹脂素材であるため、光を透過させる性質があることも、特徴のひとつに捉えました。
  • 水回りになくてはならない撥水・撥油特性
    • キッチン周りやバスルームで使われることから、その優れた撥水性も特徴のひとつとして、制作に活かすことにしました。

③次に継いでいくための、素材の魅力を伝える物語の設計

これまでの過程を経て、今回の制作コンセプトとして「新しい生活へ提案できるキッチン周りで使える素材の特性を活かしたプロダクト」を設定しました。
家を作る/リフォームする際に出た端材が、別の形となって新しい生活を豊かにするためのプロダクトとして生まれ変わる物語を提案しました。

Outputs





「CURARI-ZA」に大喜利してほしい課題を抱えた素材
持続可能な新規事業やプロダクト・サービスの開発について、お気軽にご相談ください。

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Member

株式会社ロフトワーク, MTRL クリエイティブディレクター
片平 圭

武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒。大学ではインスタレーションを表現手法にしたファッションデザインを学ぶ。卒業後、アパレルのコレクションブランドで企画生産管理、店舗運営に従事。その後、素材やものづくりの新たな可能性を探求するためロフトワーク/MTRLに入社。趣味は日光浴。

株式会社ロフトワーク, バイスMTRLマネージャー
長島 絵未

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。広告制作会社にてディレクターとしてイベントやデジタルコンテンツの制作を担当。ロフトワーク入社後はWebや映像などのデジタルコミュニケーションから空間デザイン、組織改革プロジェクトなど、多岐にわたるプロジェクトを担当。MTRLに所属後は、化学メーカーや素材メーカーをクライアントとしたプロジェクトを推進。サーキュラーエコノミーとサステナブル素材に関わる仕組みのデザインと実践を行なっている。
https://loftwork.com/jp/people/emi_nagashima

CURARI-ZA
CURARI-ZA

MTRLと株式会社博展で立ち上げた、
「素材起点のものづくり」を推進していく”素材大喜利集団”「CURARI-ZA(くらり座)」

近年、地球温暖化や天然資源の枯渇危機などの問題から、従来の様に「つくりたいもの起点」で素材を自由に選定し、ものを作るという様な事が難しい状況にあります。

そんな中CURARI-ZAは、様々な素材に寄り添い素材の持つ特性や価値を理解·発見する事によって「素材起点のものづくり」が当たり前になるような状態をつくることを目的に活動します。

https://www.instagram.com/curariza_sozai/

株式会社博展
株式会社博展

株式会社博展は、パーパス「人と社会のコミュニケーションにココロを通わせ、未来へつなげる原動力をつくる。」のもと、プロモーションイベント、展示会や商談会、施設環境開発などを通じて“人の体験”を統合的にデザインし、企業や社会の課題解決に貢献しています。
https://www.hakuten.co.jp/

博展 | サーキュラーデザインルーム
イベントや空間のデザインにおいて資源循環を軸にした環境負荷の低減と、クリエイティビティや体験価値の向上の両立を目指しています。
instagram:@hktn_cdr
https://www.instagram.com/hktn_cdr/

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