Wood Textile “MOC-TEX®”

木材を配合した植物性テキスタイル。皮革のような質感が特徴です

サンプル展示

KYOTO(京都市下京区)

TOKYO(東京都渋谷区)

NAGOYA(愛知県名古屋市)

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※最新の在庫については製造元にご相談ください。

MOC-TEX®は植物性バイオマステキスタイル。
木粉とバイオポリウレタン樹脂から成り、放湿/吸湿性、消臭性に優れ、木の香りがするのに本革の見た目・質感を再現した素材です。

開発の背景:木粉の新しい用途を探して

近年、再生可能な資源である木材は持続可能で環境負荷の低い材料として注目を集めている。一方、日本は森林が国土の7割を占めるにもかかわらず、その手入れが十分に行われず、森林の機能が生かされていない1)。国産木材を活用することは、森林資源の価値を向上し、適正管理、再生産の循環につなげていくために重要である。

木材の活用例として、木粉とプラスチックを複合化したウッドプラスチックコンポジット(WPC)がある。木材の風合いを残しながらプラスチックの性質も併せ持ち、デッキ材などのエクステリア用途で多く使用されている2)。木粉は間伐材などの未利用材や建築資材の製材過程で生じる木くずなどの廃材を細かく粉砕したものであり3)、木粉の利用は廃木材のアップサイクルといえる。

これまでWPCは硬質なものが一般的で、柔軟な風合いを有する素材はあまり見られなかった。サンノプコ㈱は、木粉の新しい用途として、皮革(本革、合成皮革)分野で近年注目を集めている「植物由来本革代替品」への適用を試みた4)。

植物由来本革代替品について

合成皮革は近年、本革と比較して動物由来でないことからエシカルの観点で販売を拡大している。合成皮革は現在、石油由来のものが中心であるが、サステナビリティの観点から再生可能な植物原料を使用する植物由来本革代替品が注目を集めている。

植物由来本革代替品は、本革のようになめしを行わないため、本革より廃水や二酸化炭素発生量が少なく、製造時の環境負荷が低い。合成皮革に対しては、植物を原料に使用しているため、石油資源の使用量削減や資源循環につなげることができ、カーボンニュートラルの観点で優れている。

これまで、パイナップルの葉やリンゴの廃繊維、ブドウの搾りかす、マッシュルームの菌糸体など、さまざまな植物を原料とした植物由来本革代替品が開発されている。『MOC-TEX®』は国産木材の未利用材をアップサイクルし、木質感がありながら、本革の見た目・質感を再現させたもので、これまでの植物由来本革代替品にはない新しい素材である。

MOC-TEX®について

『MOC-TEX®』は一般的な合成皮革と同様、表皮層、接着層、基布の三層で構成された積層体。

表皮層は、本革に類似した弾性や柔軟性が得られるポリウレタン樹脂を用いた。
環境負荷低減の観点から、植物性バイオマスを含有した水性バイオポリウレタン樹脂を開発し、これに木粉を20~40%複合することで木質感を出した。水性バイオポリウレタン樹脂のバイオマス含有分と合わせると表皮層の植物性バイオマス比率は50~70%であり、石油資源の使用量低減や資源循環の促進に貢献できる。
さらに、一般的な合成皮革の表皮層用塗工液は溶剤系のため、塗工・乾燥時の臭気など、環境面で課題があるが、『MOC-TEX®』の表皮層用塗工液は水を媒体としているため、製造時に有機溶剤臭はなく、木質の良い香りがする。

接着層や基布は、一般的な合成皮革と同様の素材が使用でき、基布としては天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維から成る織布、不織布、編布、起毛布、樹脂加工布などが使用できる。
『MOC-TEX®』では基布も植物由来にこだわり、綿やレーヨンを優先的に選定することで、テキスタイル全体の植物性バイオマス比率は最大80%である。必要により、一般的な合成皮革と同様に、表皮層の上にプリント層を設けたり、表面の耐久性を向上させる目的で表面処理層を設けたりすることもできる。

木材由来の機能

『MOC-TEX®』は木材由来の以下の特長を有する。

  • 木質感:表皮層は木材を多く含むため木材のナチュラルな色や質感を有し、一部木質繊維が表面に出ることでヌバックのような風合いを有する。木材が樹種によって色が変わるのと同様に、採用する木粉の樹種により表皮の色が異なる。また木粉以外に木材を脱色した木材パルプの粉末を使用した場合は白色にすることも可能である。保存状態が良好であれば木材おのおのの特有の香りも保持できる。
  • 吸放湿性:牛革と比べ吸湿しにくいが、吸湿率に対する放湿率は75%で牛革の63%より高いため蒸れにくい。
  • 消臭性:牛革と同様に空気中のアンモニア濃度を100ppmから検知管の検出限界(0.5ppm)以下に低下させる消臭性を有していることを確認した。
吸放湿性

吸放湿性とは素材が空気中の湿気を吸収したり放出したりする機能である。一般的に本革は吸放湿性が高く蒸れにくいのに対し、合成皮革は吸放湿性が低く蒸れやすい。蒸れやすいと靴では不衛生になりやすく、スマートフォンケースやバッグなど手で長時間触れるものでは汗によるベタつきが生じるという欠点がある。

消臭性

消臭性とは、素材近傍の空気中における悪臭成分濃度を低減させる機能である。悪臭成分とは、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸などの汗臭や加齢臭の原因となる化合物などを指す。代表例として、アンモニアの消臭性試験を行った結果が本図。

『MOC-TEX®』の製造技術

製造プロセスは下記のような工程。

  1. 表皮層用塗工液の作成
  2. 離型紙への塗工・乾燥
  3. 接着層用塗工液の塗工・乾燥、基布の貼り付け
  4. 巻き取り

表皮層用塗工液作成の工程では主に木粉と水性バイオポリウレタン樹脂、水、必要により各種工程用薬剤(分散剤、消泡剤、湿潤剤、粘弾性調整剤)を配合する。

製造プロセスは一般的な合成皮革と同様だが、木粉を多く含む事によって生じる木粉の凝集や表皮層の欠陥を防ぐため、適正な工程用薬剤を選択して製造されている。

サンノプコ『MOC-TEX®』の開発例

ウッドレザー『MOC-TEX®』 ナチュラル

左から国産スギ、ベイマツ/国産ヒノキ=1/1、国産ヒノキの木粉使用

ウッドレザー『MOC-TEX®』着色品(顔料使用)

参考文献

  1. 中島孝雄、大島克仁、「木材の魅力・体力・底力」木の力、別冊付録第8章、日本木材加工技術協会関西支部
  2. 藤澤泰士、鈴木聡、長谷川益夫、高橋理平、富山県農林水産総合技術センター木材研究所研究報告、3、25-31(2011)
  3. 伊藤弘和、木質バイオマスのマテリアル利用・市場動向、株式会社シーエムシー出版、14-23(2015)
  4. 渡辺将浩、紙パルプ技術タイムス8月号、株式会社テックタイムス、(2023)

三洋化成MAGAZINEより

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