虫秘茶
虫と植物、食文化を新たな体験でつなぐ。化学生態学の研究を通じて開発された、蛾の幼虫の糞から生まれる発酵茶。
- サンプル展示
-
KYOTO(京都市下京区)
○
※FabCafe Kyoto にてサンプルをご覧いただけます。ご希望の方は実際に「飲んでみる」体験も可能です。詳しくは店頭にてスタッフまでお声がけください。
虫秘茶とは
虫秘茶、それは虫と植物がつくり出した、未だ見ぬ茶の秘境。
素材となるのは、植物の葉を食べた蛾の幼虫の“糞”。
虫秘茶はそれぞれ数十万種ともいわれる、
虫と植物の掛け合わせによって生み出されます。
葉特有の香りを強く引き出すものから、
滋味深い味わいに特長のあるもの、予想だにしない色を発するものまで。
その神秘的なメカニズムも、虫が引き出す味や香りの正体も、
未だ多くがベールに包まれています。
虫秘茶という未開の地に、いま、足を踏み入れる。
(虫秘茶 公式Webサイト より)
メカニズム
桜の葉を食べた虫の糞が、桜餅のように香る―その小さな発見からすべては始まりました。
やがて、蛾の幼虫による消化のプロセスが、茶葉の発酵とよく似ていることに気づきます。
蛾の幼虫は、葉の風味を引き出す「天然の発酵装置」だったのです。
虫と植物の組み合わせによって、味や香りは無数に変化します。

一般的なお茶、中でも発酵茶は、何らかの方法で葉の成分を化学的に変換することで、奥深さや渋み、苦味、香りを引き出してきます。何らかの方法というのは、
①植物組織の物理的な破砕
②静置による酸化・発酵
③(一部の製法では)微生物添加による発酵などがあります。
①は、植物組織に貯蔵されている化合物と酵素を接触させるためのプロセスです。植物の細胞内では、液胞と呼ばれる袋状器官に化合物が貯蔵され、酵素とは別々に蓄えられています。これら両者が、植物組織(細胞)の破砕によって混ざり合うことで酵素反応が開始します。
例えば、葉を破いた時の青臭~い匂い。あれはヘキサナールと呼ばれる揮発性の化合物です。葉を破る前は、それほど青臭い匂いはしないはずです。これは、葉が破れた瞬間にヘキサナールが生成して揮発するからです。葉にはリノレン酸やリノール酸といった脂肪酸が豊富に蓄えられています。葉が破れた瞬間、これらの脂肪酸は酵素反応によって開裂し、ヘキサナールが生成するという仕組みです。虫が葉を噛んだ瞬間に青臭い匂いが飛び出すことで、食害を免れようという、植物の防御応答の一つなのです。
そもそも、植物の持つ風味(苦味・渋み・爽やかさ・華やかな香り)のほとんどは昆虫に対する防御物質として作られているものです。たまたま人間にとって美味しかったりするだけで、はるかに体の小さい虫にとっては毒のようなものなのです。
しかし、虫にとって毒になるものは、しばしば植物にとっても毒になります。植物は自らの毒を回避するために、「毒のもと」と「酵素」を別々に保管しているわけです。
しかししかし、植物の組織が壊れる(葉が破れる)ことなど、虫に食われずとも容易に起こり得ます。強い風が吹いたり、獣に踏みつけられたり…
虫への防御のために貯蔵している防御物質がそう簡単に誤作動しては植物も困ります。防御物質を作るのにも貴重な栄養を使うわけですから。そこで、昆虫に食べられた時「だけ」毒が作動する仕組みを植物は獲得しました。「昆虫由来の成分」をトリガーとする毒作動システムです。「昆虫由来の成分」とは何か?例えば「昆虫の消化酵素」です。昆虫体内に入った「毒のもと」は、昆虫の消化酵素によって変換を受け、起爆します。非常に合理的な植物の防御システムです。
昆虫にとっては毒でも、我々人間にとってはしばしば良い風味となります。スーッとした香り、杏仁豆腐のような甘い香り、味に奥深さを与える渋み、これらは大体、虫を嫌がらせるために作られたものです。でも人間にとっては、これこそがお茶の決め手となる味わいなのです。ここではお茶の話をしていますが、噛んだ瞬間に口いっぱいに広がるハーブの香りなんかも葉の物理破壊によって生成された防御物質なのです。では、植物から風味(防御物質)を引き出す最も優れた方法が分かりますか?虫に食べさせることです。虫の酵素で起爆するように設計されているのだから、虫の酵素で起爆してやればいいという、至極当然の話です。物理的な破砕だけでは十分に引き出すことが出来ません。これが「虫を使う意味」なのです。
実際に、桜の葉を虫に食べさせると桜餅の華やかな香りと奥深い味わいが得られますが、一般的な製茶で紅茶っぽくしたものは鉄臭くて味も弱いです。だから我々は虫に葉を食べさせて、フンを回収するのです。虫が植物の防御物質を食らいながら生成した塊を。虫が植物を化学的に編集した成果を。
我々は、葉の風味を引き出すために最も合理的な方法で「そう」しているのです。
餅は餅屋の理論でいくと、葉は虫なんです。このことに人類はほとんど気づいていません、我々以外は。
「植物の防御メカニズム」と「昆虫の消化プロセス」を応用した発酵茶、それが虫秘茶です。
( note記事 より)
可能性:未利用の自然資源 × 地域性を価値化する
虫秘茶は、これまで活用されてこなかった昆虫や植物を、地域の生態系の中で活かし、新たな価値と産業を生み出す取り組みです。
植物の葉を昆虫に食べさせ、消化のプロセスを通じて風味を引き出します。これまで廃棄されてきた剪定枝などの農業資源も原料として活用でき、省スペースでも持続的に生産できます。そのため、小規模でも成り立つ新たな生業として展開が可能です。
また、地域ごとの植物と昆虫の組み合わせが、そのまま味や香りの違いになります。土地ごとの個性が、体験や文化として広がっていきます。
(参考記事:note「松崎町と虫秘茶」)
体験する
FabCafe Kyoto にてサンプルをご覧いただけます。また、ご希望の方は実際に「飲んでみる」体験も可能です(有償)。
詳しくは店頭にてスタッフまでお声がけください。

開発者
虫秘茶 / 研究者
丸岡 毅
京都大学大学院農学研究科博士課程。専門は化学生態学。研究室の先輩に影響されて昆虫愛(主にガ類)に目覚め、ここ数年は毎昼・毎夜のように“ガ”を探す日々を送る。 植物の葉を食べた蛾の幼虫のフンを原料とする発酵茶「虫秘茶」を開発し、未利用資源である昆虫のフンを高付加価値素材として社会に実装。海外のミシュラン三つ星レストランと取引を継続し、食文化の最前線に「昆虫のフン」という新たな概念を提示した。現在は静岡県松崎町や掛川市と連携し、地域植物を昆虫に食べさせる循環型産業モデルの構築を進めている。世界経済フォーラム「Global Shapers Community」メンバーとして国際的な活動にも参画し、大阪・関西万博では生物多様性保全をテーマに登壇。虫のフンを起点とした地域資源・科学・文化を統合した価値創出に挑戦している。
■ 虫秘茶 official website : https://chuhicha.com/
関連するMagazine記事
この素材もおすすめ
CubeSat︎超小型衛生模型︎
10cm角・約1kgの超小型衛星「キューブサット」。
千葉工業大学は、これまでに学生主体で1Uサイズのキューブサット4機を開発・打上げ、全て成功を収めました。
- #人造大理石
- #タンジブル
- #機能美
- #機能性
- #サーキュラーエコノミー
- #樹脂
- #かたい
- #先端素材
- KYOTO
- TOKYO
- NAGOYA
KAWARA PAINT︎瓦塗料︎
廃棄されるはずだった古い瓦を使用した地産地消型塗料。水性無機塗料に粉砕した瓦を混合することで、瓦の持つ耐久性や色相を活かした。
- #タンジブル
- #機能美
- #機能性
- #サーキュラーエコノミー
- #かたい
- #サスティナブル
- KYOTO
- TOKYO
- NAGOYA
KOKENUL︎苔塗料︎
土壌がなくとも育成できるコケを利用して広く緑化を実現できる画期的な水性無機塗料。
- #人造大理石
- #タンジブル
- #機能美
- #機能性
- #サーキュラーエコノミー
- #樹脂
- #かたい
- #先端素材
- KYOTO
- TOKYO
- NAGOYA
