Basilisk バジリスク
自己治癒するコンクリートの原材料。バクテリアとポリ乳酸の混交材。
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コンクリートの自己治癒・自己修復技術について
コンクリートは比較的安価で大量生産ができ、耐久性も高い材料であるため、建築構造物やインフラ構造に用いられるようになってから100年以上が経っています。
コンクリートには練り混ぜ時に多くの水分が使用され、この水はセメントとの水和反応で消費されるほか空気中に蒸発することで減少し、その際にコンクリートは収縮します。この乾燥収縮によって、コンクリート構造には大小の差はあれ、収縮ひび割れが発生してしまうことを避けることができません。
このような、コンクリートに避けることができず発生するひび割れについて、コンクリート自身が発生を検知し、自ら補修の必要性を判断し、その決定に基づいて自ら補修を実行するものを自己治癒コンクリートと呼び、その機構によって自然治癒、自律治癒、自己修復の3つに分類されています。
Basiliskについて
バチルス菌を利用したバイオコンクリート「Basilisk」は「バイオ系自己修復」のカテゴリに入るとされています。
オランダ、デルフト工科大学のヘンドリック・M・ヨンカース准教授が率いるチームにより開発されたバクテリアの代謝活動を利用してコンクリートに発生したひび割れを炭酸カルシウムで自己治癒していく技術(Basilisk HA)です。
材料は、休眠状態のバクテリアと餌の元となるポリ乳酸を特殊な装置で攪拌します。
この製法によりバクテリアの周りをポリ乳酸で保護することでバクテリアの生存率は格段に向上します。
生コンクリートの製造時に他の原材料と同時に投入することで、ポリ乳酸は加水分解を起こし分子量が減少し、バクテリアの餌となる乳酸カルシウムに変化していきますが、あわせてコンクリート中の強アルカリ環境によりこの変化は加速されます。
コンクリートが硬化しひび割れが発生すると、ひび割れから雨水と酸素が侵入します。これにより、ひび割れ近傍のコンクリートのPHが低下していくことで、バクテリアは休眠から目覚め、分裂を繰り返します。
分裂したバクテリアは、周りの乳酸カルシウムを摂取し、炭酸カルシウムを排出します。
この炭酸カルシウムがひび割れを埋めていくのです。
これに加えて、バクテリアは炭酸カルシウムと一緒に水と二酸化炭素を排出します。この排出された水が、まず、ひび割れ表面の未水和のセメントと反応して水酸化カルシウムとなり、その後二酸化炭素と反応することで、炭酸カルシウムとなり、細かなピンホールも埋めて行きます。
完全にひび割れが埋まり、外部からの水や酸素が遮断されると、バクテリアは再び休眠状態となり、次のひび割れの発生に備えます。
すでに建てられている既存のコンクリート構造物についても、補修を行っていくことでライフサイクルを伸ばし、建て替えせずに延命していくことが、二酸化炭素の排出抑制に繋がります。
自己治癒機能を持った補修材もすでにオランダ発で開発されており、液体タイプ(Basilisk ER7)とモルタルタイプ(Basilisk MR3)が用意されています。
- 液体タイプ(Basilisk ER7):床に発生した0.3㎜までのひび割れの内部に深く浸透し、バクテリアが栄養分と酸素を消費することで生成された炭酸カルシウムは、ひび割れや細孔内部に沈積して埋めていく技術です。
- モルタルタイプ(Basilisk MR3):モルタルの再劣化に対して、モルタルに含まれているバクテリアと栄養分が水と接触することでバクテリアが活動を開始し炭酸カルシウムを生成します。生成した炭酸カルシウムは、モルタル自身のマイクロクラックや構造物とモルタルの境界面を炭酸カルシウムで埋めることで、止水性能を回復します。
これらの自己治癒材料は會澤高圧コンクリート㈱が、Basiliskブランドでの国内における製造販売を開始しています。
また、他にも納豆菌をもちいたもの、そもそもバイオ由来ではないものなど、世界中でたくさんの研究がなされています。
Basiliskの活躍する風景
京都のFabCafe Kyotoの床でも一部、Basoloskを観察できます。
ヒビのサイズが大きすぎて、Basiliskの活動の結果である炭酸カルシウムは一部しか目視できませんが、ご来店時には確認いただけます。
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