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空間デザインの道具箱 Vol.2 イベントレポート

 

ロボットと共生する空間のデザインとは?

“空間デザインの枠組みを更新する『道具』に触れる” をテーマに、WAKUGUMI PROJECTがお届けするイベント「空間デザインの道具箱」。ヒト、モノ、テクノロジーを『道具』として集め、みんなで体験しながら学び合うオープンな勉強会です。開催2回目である今回のお題は「ロボットと共生する、空間の可能性・デザイン」。ロボット業界をリードする全5組がプレゼンしました。

・ロボットの進化は、ヒトのコミュニケーションをどう変えるのか?
・ロボットがヒトのコミュニケーションに介入してくることで、空間はどう変わるのか?
・インターフェースとしてのロボットの可能性は?

登壇者のプレゼンや議論を通じて、いままで気づかなかった視点や問いをあぶり出し、新しい空間デザインの『道具』を考えるヒントをお届けします。

 

tool007:自動運転がひらく、「動く空間」という発想(カブク)

トップバッターは、株式会社カブクのインダストリアルデザイナー 横井康秀さん。カブクは、「ものづくりの民主化」を目指すベンチャー。3Dプリンターなどのデジタル機材を活用した世界中の工場ネットワークを構築し、従来の大企業中心のものづくりの分野にも、個人や中小企業が積極的に参加できる世界を目指し、ものづくりのプロセスを変える製造業のイノベーションに取り組んでいます。

例えば、自動車業界。トヨタやホンダと共同して、デジタルファブリケーションの技術や仕組みを活用し、ユーザーの好みに合わせたカスタマイゼーションサービスを提案するなど、ユーザー体験重視の新しいビジネスモデルの構築を実験しています。

自動運転は、「自動車」を「動く空間」にし、デザインも暮らしに寄り添う。

中でもユニークなのが、自動車ソフトウェア企業とともに、自動運転技術を使った新しいモビリティプロジェクト。ポイントは、新しい「自動車」をつくろうではなく、「自律した、動くモノ」をつくろうという発想を大事にしている点です。自動運転技術は運転手という概念から開放されるのだから「自動車の延長線上にない、新しい存在をつくりたい。」と横井さんは語ります。自動車というと、割と四角く強そうなデザインが多いが、自動運転がベースの新しいモビリティたちは、丸くやわらかく受け止められそうなデザインばかり。 「子どもが見たら、家に帰ってすぐスケッチできるようなシンプルなデザインを目指しています」とのこと。個人のステイタスを表現するものではなく、人と共に暮す存在としてのモビリティは、その姿もまたやさしく暮らしに寄り添うものになるのかもしれません。

株式会社カブク https://www.kabuku.co.jp/

 

tool008:人と人のコミュニケーションを誘発するロボット(Qoobo:ユカイ工学)

「ロボティクスで世界をユカイに」を合言葉に、人の心を動かすロボットの開発・製造・販売を行うユカイ工学からは、クッション型セラピーロボット「Qoobo」。ユカイ工学のCMOマーケティング統括 冨永翼さんにお話いただきました。

「しっぽにクッションをつけたら面白いんじゃない?」という発想から始まり、昨年11月に発売されたQoobo。発売後わずか2ヶ月で約8000匹を出荷。2018年度GOOD DESIGN BEST100にも選出されました。20-30代の女性やご年配の方。仕事や住宅環境、アレルギーなどの問題でペットが飼えない方。ペットロスの方や、今ワンちゃんや猫ちゃんを飼っている方など、Qooboは様々な人に受け入れられたそう。

スマートスピーカーよりちょうどいい、ロボットが触媒になるコミュニケーションの可能性

イベントホストのいわさわたかし(岩沢兄弟)も、Qooboユーザー。「1歳の娘と、96歳の祖母の二人は、最初気持ち悪がっていたけれど、3ヶ月位経つとすっかり仲良しになった」。空間デザインを仕事とする立場から、自宅にも様々なIoTガジェットを取り入れてみたところ、Qooboのコニュニケーションの面白さに気づいた。「OK, Google。っていうのは、家族の中では恥ずかしいんですよね。でも、Qooboのような非言語コミュニケーションは嫌じゃない。」

ロボットと会話するのではなく、ロボットが触媒になって、人と人とのささやかな会話を誘発する。それもまた、ロボットと共生する形の一つかもしれません。これまでオフィス空間でたまり場的役割を果たしてきた「喫煙室」のかわりに、触媒としてのロボットを取り入れるというのはいかがでしょう?

Qoobo http://qoobo.info/

 

tool009:同じ空間で、人と協働できるロボット(COBOTTA:デンソー)

産業用ロボット開発・製造・販売を行うデンソーウェーブからは、産業用人協働ロボット、COBOTTAを、開発者の澤田洋祐さん自らが紹介。COBOTTAで実現できる、新しい人とロボットの働くシーンについて、議論しました。

COBOTTAが、これまでの産業ロボットと違うのは、「人と働く場所を共有できる」こと。「従来の産業ロボットはルールが厳しく、必ず安全柵の中で作業させ、人が近づけないように隔離することが当たり前」でした。COBOTTAは、絶対に人に危害を加えないという安全性を担保しながら、安全柵なしで、人と同じ場所で働くことができる。しかも、総重量4キロと持ち運び可能なサイズで、シンプルな操作でわずか10分で仕事を覚えてもらうことができる。

場所を取らずに簡単に、人と同じ空間で働ける産業ロボットが救うのは、“伝統工芸”?

「伝統工芸とかと合わせるとすごく面白そうですよね」といわさわたかし。伝統工芸や、昔ながらの職人が作業する空間をIT化するのは至難の技。だが、例えばCOBOTTAのように、小さなアームロボット1台さえ置ければ、空間の設えを変える必要ないものだとしたら。そして、単純作業の一部を10分で記憶させ、他の職人と協働できるなら。ロボットが完全に人の代替にならず、人にしか出来ない技の存続を支える、新しい共生の姿が見えました。

わずが10分で「Qooboを撫でる」という仕事を覚え、実際に撫でているCOBOTTA

Collaborative robot COBOTTA https://www.denso-wave.com/ja/robot/product/collabo/cobotta.html

 

tool010:言うことを聞かないミラードローン(NTT研究所)

NTT研究所からは、UXリサーチャーの橋口恭子さん。現在ミラードローンを研究している橋口さんの試行錯誤の現場の体験談から、ロボットと人の共生、そのために空間デザインが大切なこととは何かを議論しました。

ミラードローンとは、鏡を付けたドローンを複数台同時に空中に飛ばし、その鏡に光線を当てることで、より立体的で奥行きのある文字や図形を空中に描くというもの。紙やスマホを超えた、次世代のコミュニケーションメディアや演出での利用を目指しています。しかし、実現は難しく、現在も試行錯誤が続いています。

未完成のロボットは、人を成長させる。

「全然言うことを聞かないドローン。失敗を繰り返す中、対応策も増えていき、徐々に小さな結果を積み重ねるドローンを見ていると、ドローンの成長が私の成長だったと気づいたんです。」と橋口さん。わからないことに対して試行錯誤することで、新しい学びを得て、腑に落ちるところまでたどり着く。ロボットと人が共生する空間においても、「完成したロボットがいる空間」をつくるよりも、「未完成のロボットを通じて、人が学べる場」をつくることのほうが大事なのかもしれません。

 

tool011:自動化と感覚拡張(Panasonic Robotics Hub)

最後はPanasonic Robotics Hubの安藤健さんと榊原瑞穂さん。現在彼らが注力している2つのテーマ、「AutomationとAugumentation」からいくつか事例を紹介いただきました。Automationでは、「いかに自動化してロボットに任せるか?」という発想から、病院内での薬の配達や、トマトの自動収穫システム開発などに取組んでいます。

Augumentationでは、「いかに、人が本来持っている能力を高められるか?」という問いから、様々な拡張技術を研究しています。例えば「感覚拡張」では、実際には何もない空間でも、専用のデバイスを手に取り付けることで、映像に合わせて音や振動が身体の感覚を引き出す。玉砂利や雪道、更には炭酸の中やマグマの上を歩いているような感じが味わえます。

※ Youtube -Impress Watchより引用

感覚拡張は、仮想空間における「場の空気」のデザインに大事な技術となるかも?

「すこし話が飛びますが、感覚拡張と聞いて考えてみたいのは、オフィス空間の拡張についてですね。」といわさわたかし。テレワークやビデオ会議が日常的になると、全員がオンラインから会議に参加し、社内には無人の会議室だらけ…という状況も生まれるかもしれません。

そんな光景が当たり前になったら、空間デザイナーは何をデザインするか?もしかしたら、仮想空間のオフィスデザインかもしれない。そうなると、みんなバラバラの場所にいても、まるで同じ場にいる感覚を共有できる、「場の空気」のデザインが、大事になるのかもしれません。

Panasonic Robotics Hub https://tech.panasonic.com/jp/robot/

 

■イベント概要

SPACE DESIGN TOOL BOX VOL.2
「空間デザインの道具箱」

日時:2019年2月21日(水) 19:00-21:30
場所:MTRL TOKYO(FabCafe MTRL)
東京都渋谷区道玄坂1丁目22−7 道玄坂ピアビル2階
参加費:1,000円(1ドリンク付)
定員:40名
企画:WAKUGUMI PROJECT
協力:MTRL TOKYO(FabCafe MTRL)

 

■WAKUGUMI PROJECTについて

スペースデザインユニットの岩沢兄弟(いわさわひとし+いわさわたかし)と建築系プログラマーの堀川淳一郎(Orange Jellies)を中心に始動したプロジェクト。いまだから出来る、新しい空間づくり・場づくりの方法を発見し、実験と提案を行う。2018年10月、誰でも簡単に図面がつくれる家具DIY支援ツール「WAKUGUMI β」を公開。

http://www.wakugumi.com/

 

◼岩沢兄弟について

モノ・コト・ヒトのおもしろたのしい関係をつくるスペースデザインユニット。空間・家具・プロダクトなどの立体物設計、デジタル・アナログ両方のツールを活用したコミュニケーション設計を手がける。

http://battanation.com/

空間デザインの道具箱 Vol.3現在企画中!
告知公開もう少々お待ち下さい。

次回開催は、岩沢兄弟Facebookページよりお知らせ予定です。
関心のある方はこちらからチェックをお願いいたします。

岩沢兄弟(Facebook):https://www.facebook.com/battanation/

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