- Event Report
FabCafe Nagoya Art-Tec Project #01 – 鷲尾友公×ワーロンシート – レポート
産業とアートを結ぶ
日本のものづくりを支える多様な産業が集積する都市、名古屋。
”東海地区のアートや企業、産業をつなぐクリエイティブのハブとなる”という目標を掲げ、2020年9月のオープンしたFabCafe Nagoyaは、Fabマシン(*1)利用やクリエイターとのミートアップなど、これまで多様な活動を展開してきた。
また、国内のFabCafe各拠点に目を向けると、FabCafe TokyoやFabCafe Kyotoでは、”MTRL”(*2)という素材と企業を結ぶオープンイノベーションが併設され、日本各地の素材を使った新たな試みが行われている。
FabCafeらしさを生かしつつ、東海地区のアートと産業を結びつけ、より盛り上げていくためにFabCafe Nagoyaに何ができるか。
その一つの取り組みとして、今回「FabCafe Nagoya Art-Tec Project」を始動。
アーティストには、名古屋を軸に各地で活躍する鷲尾友公氏、MTRLの素材メーカーからは株式会社ワーロンとのコラボレーションが実現。
アートとテクノロジーの新たな可能性を探る製作・企画展示となった。
(*1)Fabマシン…UVプリンタやレーザーカッターなど、デジタルファブリケーションを行う機械。
(*2)MTRL…「素材」をテーマにした、クリエイターとメーカーのためのイノベーションプラットフォーム。
→MTRL webサイト
FabCafe Nagoya Art-Tec Project vol.1 鷲尾友公×ワーロンシート
名古屋地区から各地で活躍するアーティストの方と、MTRLの素材をコラボレーションさせ、アートとテクノロジーが織りなす新たな可能性を探る製作・企画展示。
地元で活躍する素材メーカーとの出会い
素材提供には、名古屋市に本社を置く株式会社ワーロンがプロジェクトに参画。
同社は、1922年創業の和風空間を演出するインテリア素材メーカーで、破れやすい、燃えやすい、水に弱いといった紙の弱点を独自のラミネート技術を駆使して克服し、様々な表現で和紙の魅力や新しい和の形を空間へ広げている。
今回は、ワーロンシート「日本の色」シリーズ15色を提供いただいた。また、同社製造の強化和紙「タフ・トップ」も作品に使用し、2種類の製品がこのArt-Tec Project を彩った。
リンク:株式会社ワーロン webサイト
https://www.warlon.co.jp/
名古屋を代表するアーティスト・鷲尾氏とのコラボレーション
鷲尾氏は、愛知県を中心に活動。 独学で絵画を学び、人物や事象など享受した事柄と関わり合いながら、イラストやデザイン、立体など多岐に渡る制作活動を展開し、人間の自由な行為として表現する。「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」や、金沢21世紀美術館での作品展示など、精力的に活動を展開している。
今回の株式会社ワーロンとのコラボレーションによるプロジェクトには「何ができるのかという、単純な好奇心」から参画を決めたという鷲尾氏。
製作を全てFabCafe Nagoyaで行い、レーザーカッターなどを用いてMDFの枠をカットしワーロンシートと組み合わせるなど、素材の多彩な表現を探った。
FabCafe Nagoyaのレーザーカッター使用に関して、新たな可能性を感じたという。
「取り組もうとしている作品の制作手段として使えそうだなと思ったかな。スタジオ(*3)(Utopia)で木を切る作業とかするんだけど、手でやると時間かかるでしょ。それがiPadで描いて機材に取り込んで数分でできちゃうから、効率が上がるよね。ジクソーで半日かけて削っていたのが一瞬だもん。(笑)そのまんま作品になるかどうかは制作内容によって変わるけど、活用できるなら活用していきたいかな。」
一方、普段と違うFabCafe Nagoyaでの製作には、難しさも感じていた。
「カフェもついているし、工房って言いきれるほど特化した制作スタジオやアトリエでもない。やっぱり場所によって感覚は変わるねぇ。あとは、やっぱり今までと違うのは、コロナ禍。行動範囲が狭くなってるっていうか、気を遣う部分が増えちゃって、制作だけに思いっきり集中することが難しいのはあったかな。」
作品をつくる人々にとって居心地のいい場所を作っていくことが、FabCafe Nagoyaが目標を実現するための一つの鍵となるかもしれない。
(*3)…鷲尾氏が製作を行っているスタジオ。
→STUDIO UTOPIA
FabCafe Nagoya×鷲尾友公×ワーロンシートが織りなす作品の数々
こうした未知との挑戦と葛藤の中で、様々な作品が生まれた。
ワーロンシート「日本の色」シリーズを用いて完成したのは、横たわる女性をモチーフにしたインスタレーション。和紙の柔らかな風合いと、鷲尾氏が生み出す滑らかな曲線が重なり合い、年末年始の高揚感を窓一面を使って表現した。
窓辺に置かれているため、昼と夜で作品の持つ雰囲気が大きく変わるもの愉しい。
また、同社の強化和紙「タフ・トップ」を用いて、入り口近くに暖簾が製作された。これは鷲尾氏がFabCafe Nagoyaを訪れた当初から作成を予定していたもので、白いタフトップ紙を短冊上に吊るし、風や光を取り入れその表情が変わる、爽やかな仕上がりとなっている。よく見ると、作品にはSTART→GOALという迷路が示されており、鷲尾氏の遊び心が光る。
アートと素材メーカーのコラボレーションが導き出した”解”
「芸術作品に本社製品を使用することで、自社の商品の表現の幅が広がった」株式会社ワーロンの渡辺氏は話す。自社の素材をアート作品で取り扱うことに、素材メーカーとして新たな可能性を感じたということだろう。一方、実現までには壁も多く存在した。素材の特性というある意味の制約の中で、鷲尾氏も、構想までにたくさんの実験を重ね、模索していた。
そんな葛藤の中生み出された作品は、これまでのワーロンシートや、鷲尾氏の作品とも一線を画する、アート×テクノロジーという式の解の一つとなった。
今後も、アーティストと素材メーカーとのコラボレーションは続行していく予定だ。
この公式に、明確な一つの答えはない。プロジェクトを通じて出会う、その時その場に居合わせたアーティストとテクノロジーとの掛け合わせが、無限の解をFabCafe Nagoyaから導き出していくことだろう。
今回鷲尾氏が製作に使用したレーザーカッターやUVプリンターなどは、FabCafe Nagoyaで誰でも使用することができる。→Fab Serviseはこちら
ぜひあなたも、アートとテクノロジーのコラボレーションを体験し、FabCafe Nagoyaからあなただけの”解”を導き出してみてはどうだろうか。
(執筆:FabCafe Nagoya 魚住)
展示情報
〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内3丁目6番18号 レイヤードヒサヤオオドオリパーク内
→Google Map
Artist
鷲尾 友公
愛知県生まれ。同地在住。 独学で絵画を学び、人物や事象など享受した事柄と関わり合いながら、イラストやデザイン、立体など多岐に渡る制作活動を展開し、人間の自由な行為として表現する。主な展覧会に「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」など
ワーロンシート提供
株式会社ワーロン
1922年創業の和風空間を演出するインテリア素材メーカー。
破れやすい、燃えやすい、水に弱いといった紙の弱点を独自のラミネート技術を駆使し、
和紙の美しい風合いはそのままに、防炎・難破性といった様々な機能性和紙・和風透光装飾樹脂板を展開。
障子紙・建具面材や照明カバー、サイン・ディスプレイ材として、
様々な表現で和紙の魅力や新しい和の形を空間へ広げている。