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[Event Report]渋谷の街観察から理想の生活を考える「新生活のデザイン vol.1」

「新生活のデザイン」は、MTRLの大学生コミュニケーターが企画し生まれたプロジェクトです。

目まぐるしく技術や街並みが変化する現代において、自分らしく創造的に暮らすためには、日常世界をアップデートする「新生活のデザイン」が必要なのではないか。そのような問いのもと、本プロジェクトはスタートしました。

今回のイベントでは、様々な方法で渋谷のまちづくりに取り組む鈴木大輔さんを招き、渋谷の街観察から自分にとっての理想の生活とはどのようなものなのか考えるワークショップを行いました。

本稿ではその様子をお届けします。

企画・執筆・編集:山内菜摘・古川紗衣

渋谷の未来を創る、鈴木大輔さんのまちづくり。

まずは鈴木さんによるゲストトークです。

自身について、渋谷でなんでもやっている人、若者に機会を提供している人、そしてその若者とコミュニティを作っている人とご紹介される鈴木さん。そんな鈴木さんの多岐にわたる渋谷での活動についてお話しいただきました。

渋谷の課題解決事例のご紹介では、街の課題を解決する鈴木さんの視点をお話しいただきました。渋谷の大きな課題の一つはゴミ問題です。去年センター街には1ヶ月に260万人以上の人が訪れ、年間432万円の清掃費がかかっているそうです。鈴木さんたちが取り組む渋谷の清掃活動「シブテナクリーン」では、ゴミを”拾う”のではなく、ゴミを”出させない”という方法で、課題を解決しようとしています。

何度も現場に足を運ぶ中で「ゴミがゴミを呼んでいる」ことに気づいた鈴木さんは、飲食店に「閉店後のゴミを、道路ではなくシャッターの内側に置いてくれないか」と交渉するようになります。数回にわたる交渉の結果ゴミの置き場所が変わり、変わったその日からその場所のポイ捨てがほとんど無くなったそう。ほんの少しの変化が、大きな課題解決につながることを実感させられました。

また鈴木さんは、違法な路上ライブの問題にも取り組まれています。渋谷を歩いたことのある人の多くが、スクランブル交差点近くの公道などで行われている路上ライブを見かけたことがあるのではないでしょうか。本来公道の路上ライブは、申請や道路の使用料などが発生するのです。

公道の無許可の路上ライブは法律違反。でも若者の活動は応援したい。そんな想いから、私道で行う公認のストリートライブ、「シブライブ」を立ち上げました。

路上ライブ前に関わる人全員で清掃を行い、綺麗になったあとは路上ライブを全力で楽しむ。渋谷の街にとっても、アーティストにとっても、アーティストのオーディエンスにとっても嬉しい取り組みです。

他にも沢山の課題解決事例をお話しいただきましたが、共通して客観的な視点を保ちながら、課題と徹底的に向き合い、様々な人を巻き込んで取り組んでいく鈴木さんのまちづくりの姿勢がよく分かるお話でした。

まとめとして鈴木さんにお話しいただいたのは、これまで鈴木さんがご自身の経験から得た課題解決のポイントです。一つ目は、「一方的に排除してはダメ」。二つ目は「客観的な視点」。三つ目は「Win Win Win Win Win Win ・・・」でした。

今起きている課題に目を向けたとき、短絡的・直接的な解決を行うだけでは、別の立場にいる人が新たな課題を抱えてしまうかもしれません。紹介していただいた課題解決事例でもこの3つのポイントが意識されていました。

前述のゴミ問題においては、ただゴミ置き場を移動させただけでは、元々そのゴミ置き場を正当に利用していた飲食店がネガティブな感情を抱えてしまいます。

そうではなく、一方的な行動ではなく店と密なコミュニケーションをとること。客観的に状況を捉えた上で納得感のある交渉をすること。施策がもたらす結果が誰にとってもポジティブであること。これらのポイントを抑えることで、持続可能な解決策を導き出すことができるのだと感じました。

鈴木さんのお話はこの後行ったワークのヒントとなることが多くありました。

街を歩き、今の渋谷を五感で捉える。

ゲストトークで得たインスピレーションを胸に、参加者たちは神泉・渋谷エリアへとフィールドワークに繰り出しました。ワークシートのマップを頼りに、街中の人々や、個性的なお店、そしてそこでの出来事を観察し、その背景について考えます。

普段何気なく通り過ぎる風景も、じっくりと観察することで新たな発見や気づきが生まれたようです。

渋谷の理想の姿を発見しよう

フィールドワークの後は会場に戻り、個人ワーク。

まずは、フィールドワークで観察した内容のうち、残した方が良いと思ったこと、変えたほうが良いと思ったことを考えました。

渋谷エリアは開放的な空間や賑やかな雰囲気、広告発信の仕組みを残すべき、神泉エリアではレトロな雰囲気、飲食店が豊富なところを残すべきだと感じる人が多かったようです。

一方で、渋谷の迷いやすい構造や人の混雑、神泉の道の狭さや段差の多さに関しては、改善すべきだという意見が挙げられていました。

そしてそれらを踏まえ、自分にとっての理想の渋谷の姿を考え、グループ内で共有していただきました。

渋谷エリアの観察をしたグループからは、街の理想の姿として「人との繋がりが感じられる場所」、「自分事化できる街」、「参加型のコミュニケーションを生む場所」などの意見が。

神泉エリアを観察したグループからは、「街に開かれた店が多く、お店同士や地域の人同士が繋がりを感じられる街」、「多様な店があり、お気に入りが見つけられる街」などの意見が挙げられました。

スクランブル交差点や大きな商業施設のある渋谷、閑静で趣のある飲食店や小売店の多い神泉。

参加者たちが描く理想の街像には共通点が見えてきます。それは”まちと人との繋がり”という想いです。賑わいの中での繋がりを求める渋谷、静けさの中での繋がりを大切にする神泉。表現は異なれど、人々が求めているのは”繋がり”という本質的な価値なのかもしれません。

自分にとっての理想の街や生活の姿を発見しよう

ここまでは渋谷の街を例に理想の街や生活について考えてきましたが、ここからはもっと自分の生活に引き付けて、大切にしたい街や生活の要素とは何か、またそれを実現するためにできることを考えるワークに入っていきます。

参加者の皆さんが発見した大切にしたい街や生活の要素をいくつかご紹介します。

 

「個人店や商店街に活気がある街。そのために店同士の連携を強化する、住民と店で働く人が顔見知りになる。」

「移動にストレスがない生活。そのために目的にあった場所とそこまでのルートを提示するサービスがほしい」

「新しい施設に頼るのではなく、街への愛着が感じられる生活。そのために店ができた背景を見える化する」

それぞれ生活に求めるものは様々。

共有タイムでは求めるものと生い立ちが関係していることが分かったり、他の人の理想の生活を想像して、自分と比較してみたりと話が盛り上がりました。

渋谷の街で自分らしい生活をデザインする

初めは初対面の方が多く緊張も伺えた参加者ですが、最後にはワークの内容から派生しパーソナルな話もできるように。若干の名残惜しさを感じつつも、イベントは無事クロージング。ここからは、参加者のアンケートの声を少しだけ抜粋します。

 

普段通り過ぎるだけの渋谷の街について考えることができて面白かったです。また、他の人の着眼点や考えなど、自分とは違う意見を聞けて新たな発見を得られました。

はじめましての方々と渋谷について考える、そんな機会は今まで滅多になかったので楽しかったです!フィールドワークをすることで、新たな渋谷の一面や改めて見ると違った景色が見えて、客観視することができ、充実した時間でした!

素敵なイベントをありがとうございました!普段何気なく通り過ぎてしまう景色やまちを構成しているものについて立ち止まって考えてみる体験がとても新鮮で楽しかったです!

今回は、鈴木さんのトークやフィールドワークを通して、渋谷の街を例に理想の生活について考えました。変化する街、時代の中で足をとめ観察することは、現状の生活を見つめ、より豊かな生活のヒントをみつけるきっかけになるかもしれません。

より自分らしく創造的に生活するために日常生活をアップデートする「新生活のデザイン」。そのスタートとして相応しいイベントになりました。

今後も日常の観察や様々な人との対話から「新生活のデザイン」を実践していきたいです。

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