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未来のお花見体験!!『お花見フューチャーズ』

 

未来のお花見体験!!『お花見フューチャーズ』

https://fabcafe.com/jp/events/tokyo/230626_ohanamifutures

『未来のお花見』ってどんな形?3Dプリンターでフードデザインを体験

こんにちはkinaです。
2023年、春。コロナウイルス感染症第8波が収束し、政府からも”マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本”と方針が発表されました。
今年も花粉が猛威を振るっておりますが、その中でも少しずつ身の回りで生活する人々の素顔が見れる様になり、本当にあたたかい春がやってきたなと感じております。

”終息”ではなくあくまでも”収束”ではありますが、春らしく東京各地ではお花見イベントが開催され、今回私は『お花見フューチャーズ』という未来のお花見をテーマとしたイベントに参加(兼カメラマン)をしてきました。レポートを投稿します。

まだ見ぬ『未来のお花見』を考える

おそらく、この数年を生きた人々はコロナウイルスの感染拡大に脅威を感じ、通常であればフォーカス出来ていたであろう話題や事柄から、意図せず遠ざかってしまったのではないでしょうか。

そんな最中でも、陰に隠れてテクノロジーの発展は続き、また逆に環境汚染や食糧危機といった地球規模の社会問題も大きくなっていきました。

良い方向にも悪い方向にも様々な分野がベクトルを伸ばし続けていく中で、未来に私たちはどう生活しているのか。
漫画やアニメのような架空の世界だって現実に起こりうることを知った私たちが、この先に考えるべきことは何か。

”想像の世界の中だけど起こりうる事”×”お花見”×”食”=???
お花見フューチャーズは、イベントタイトルこそポップですが私たちの食の未来について日本のお花見という文化を通して考える。そんなイベントでした。

3Dプリンターでフードを作る

3Dプリンターというと、世の中的には樹脂を書き出すデジファブツール。といった印象が強いのではないでしょうか。

ですが、今回のお花見フューチャーズは3Dプリンターで食べ物を書き出す。つまり3Dフードプリンターで作った食べ物を食べてみよう。そんな企画でした。

データの作り方は?

3Dプリンターで書き出しを行う際には3DCADソフト等を使用し、はじめに書き出す形のデータを作っていきます。
初心者でも感覚的に3Dデータを作ることができるFusion360や建築業界やジュエリーデザインの業界でも使用されているRhinocerosなどが代表的ですね。

今回、最も繊細な形で作られていたエレガントポテチはRhinocerosを使用し、データ作成を行っていました。モデリングシミュレーションや演算を画面の中の数値を調整することで行うことができます。

ペースト状のポテトをなんとEnderを使用して書き出していきます。
※ノズル部分はフードプリンターを取りつけている。

気になるお花見メニューは

さて、そんな3Dフードプリンターを使って書き出した3つのお花見メニューをそれぞれ紹介してみようと思います。

正直にお話ししますと、参加する前まで『本当に美味しいのだろうか?』と疑っていた私でしたが、味・香り・食感全てが申し分なく3Dプリンターが食の世界に調理器具として導入される未来も近いのだろうと感じました。

My三色団子

『お団子といえば球体』そんな当たり前から抜け出そう。それがMy三色団子。

デジタルファブリケーションやそれに伴うツールが入手しやすくなった現代では、パーソナルファブリケーションの敷居が下がりつつあります。

未来では今よりも更に敷居が下がり、多くの人々が自分だけのファブを気軽に行うことが当たり前になるでしょう。

『きっと誰しも好きな形のお団子データを作って書き出して食べているに違いない』そんな未来の世界を想像して作られたのがMy三色団子です。

自分だけの形を今回は春らしく花の形としお団子データを作成。実際に3Dプリンターで書き出し、通常のお団子と同じく茹でて冷やして完成です。

すあまの甘さがとても優しくなった様な甘みで、見た目以上にもちもちとして美味しかったです。

夢を見せ続けたチョコ

我々が普段何気なく口にしているチョコレート。そしてその原材料のカカオ豆。おそらくそれらの未来について深く考えたことがある人は少ない。

カカオ豆の栽培は湿度や気候などの複数の条件を満たす事が必要であり、限られた環境下でしか行うことが出来ません。その条件を満たす国は勿論限られ、現在生産量の7割をアフリカが占めています。

しかし、現在アフリカ諸国ではカカオ生産に伴う様々な問題が発生しています。貧困、労働災害、森林伐採、児童労働などです。

日本では安価に販売されている嗜好品の一部でもあるチョコレート。カカオ豆の生産に関する各種問題は、このチョコレートの販売価格が安いことが一因であるとも言われています。

カカオ豆は加工に手間がかかるにも関わらず、それに見合う収入をカカオ農家の人々が得ることは出来ません。

又、森林伐採も大きな問題となっており、カカオ豆の需要拡大により生産地ではカカオの増産の為、たった数年で東京23区の面積を超える面積の森林伐採や破壊が行われました。

この様な状況下ではカカオ豆の生産量は年々減少していくことが容易に予想されます。
そんな未来で我々の世界にはどんなチョコレートが存在するのか。どんな形であれば存在することができるのか。それを考えて作られたのが夢を見せ続けたチョコです。

見た目はそのまま、内部構造の粗密を減らしつつ今までと味わいの変わらないチョコレートを。
こうすることでカカオの生産量が減った未来にも嗜好品としてチョコレートを販売することを可能にするというわけです。

粗密を変えて未来の年数ごとに何パターンもチョコレートを書き出していました。
私が食べたのは2030年。ん〜確かに、少し軽い印象はあるものの口どけや満足感は変わらず確かに美味しい。

ビジュアルから予想していた”スカスカ”した感じは一切感じられず、エアインチョコのような軽さや物足りなさも感じず、粗密の調整で今と変わらない味わいを再現できることを体感しました。

エレガントポテチ

『健康であることが国民の義務である。』そう日本政府が発表する未来もあるかもしれない。

2015年4月にアリゾナ州の一部地域ではすでに導入されたジャンクフード税、いわゆる肥満税をご存知でしょうか。
肥満になることで成人病の確率が高まり医療費の高騰につながります。この対策の為に導入されたのがジャンクフード税です。

ファストフードを中心とした食品に対して税をかけることで医療費の削減が行え、税収も増えるというものです。
確かに政府にとっては導入するメリットがあり、各国での導入が検討されている事を考えれば日本でも導入される可能性は考えられますね。

そんな新しい税金が課せられた未来でポテチらしさを無くした儚げなポテチが存在したら、人々はそれをどう食べるのか?!
そんな架空の世界に対する疑問を今の世界で実際に検証したのがエレガントポテチです。

入力する数値を変えるだけで複数のタイプの構造のエレガントポテチが書き出されていました。なんと、書き出しを行うのに1枚10分..!

書き出しが終わったら少し冷凍して形を固めてベイクして完成です。つまりはおよそ1時間で4~5枚ほどしか生産できない、貴重なポテチです。

私はのり塩味のエレガントポテチをいただきました。
F値3.5で渋谷の街を背景にとったエレガントポテチは、確かにその名前通りの写りを見せてくれました。

持った瞬間からすぐに崩れてしまうのではないかと思うその儚いフォルムに美しさと、これを作るのにどれだけの労力がかかっているのかを考えたら愛おしさが芽生えました。

結果、私は非常に丁寧にこれを食べることになります。3口ほどに分けて食べ、しっかりと海苔の旨みを感じることが出来ました。

未来のお花見の形は

今回3Dプリンターを使って私たちの未来の食べ物を創造し実現する、そんな体験を春のお花見という日本文化と融合させて世に発信したお花見フューチャーズ。

会場には親子で揃って興味津々にフードが書き出されて行く過程を見守る様子や、参加者の皆さんがイベントに参加した後に、意見交換する様子もみられました

同日夕方にはフードテックの分野で活躍するゲストを招き、NaraDelic第一回目のMeetupも開催され発展途上のフードテックと私たちの食卓のフードデザインについて語られる夜となりました。

今後も3Dプリンターに限らず、未来の食をデザインするそんな企画が開催される模様です。要チェックですね。

MEMBERS

株式会社ロフトワーク, MTRLプロデューサー / コーヒーエンジニア
大西 陽

ヨーロッパを中心にファッションデザイナーとして活動後、2012年帰国。
複眼的な視点を持ったデザインを行いたいという想いから、分野の垣根を超えた接点を持つ食の分野に興味を抱く。2014年よりFabCafe Tokyoでディレクター、リードバリスタ、コミュニティマネジャーとして勤務し、FabCafeに集まる多種多様なコミュニティと多くの企画やプロジェクトを立ち上げる。2024年よりロフトワーク MTRL所属プロデューサー。

株式会社ロフトワーク, テクニカルディレクター
土田 直矢

大学卒業後、組み込みソフトウェアエンジニアとして次世代車載システムのスマートフォン連携機能、車載ソフトウェアプラットフォームの製品開発に従事。ロフトワークでは、技術的知見を用いたサービス・プロダクトの開発支援プロジェクトを担当し、様々なプロトタイプを制作。プロジェクトマネジメントだけではなく、自分で手を動かしながらアイデアを形にしていくことを大切にしている。社外活動としてCalm Technologyの思想を土台としたプロダクト開発チームを運営。「まずは試してみる」をモットーに日々ものづくりの楽しさを探求している。

AUTHOR

FabCafe Tokyo Fabディレクター
坂井 貴菜

石川県小松市出身。

コロナ禍をきっかけに独学でデザインについて学び始める。
“0から学び形にしていく事“や”脳内を具現化する事“の嬉しさを伝え、創作活動をする全ての人に可能性を与えたいという思いから2020年FabCafeに入社。2022年よりFabディレクターを務めている。

デジタルファブリケーションの数値化された正確な美しさ×人の感性という抽象的な美しさを掛け合わせ、個人ではレザーを中心に作品を作っている。プロダクトデザインについて現在勉強中。

趣味は楽器、DTM、機材の分解、ペンギン観察
叙情系ハードコア・ポストロック・残響系の音楽を好み、音楽活動も行う。
加工Blogはこちら(https://kinacreate.com)
february fuzz Instagram(https://www.instagram.com/february_fuzz/)

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