• Event Report

AIはデザイナーの役割をどう変えるのか:A.D.A.M 第七回レポート 〜LA Week @沖縄〜

この記事はMTRLを運営するFabCafeの記事からの転載です。

こんにちはFabCafeの藤田です。FabCafeではEverblue Technology社との協業プロジェクトとして、「A.D.A.M」というプロジェクトをスタートしました。

「A.D.A.M」は、オートデスク社による3D CAD/CAM ソフトウェア 「Fusion 360」のジェネラティブデザインを使って、自動操船ヨットのデザインをしようというプロジェクトです。近年、AIを使って解析、環境や目的に最適化した形状を生成する流れは、様々な産業で進んでいますが、このプロジェクトでは解析による最適化だけでなく、AIを使って「誰も見たことのない形をデザインする」ことにチャレンジします。

プロジェクト詳細→https://fabcafe.com/tokyo/blog/a-d-a-m-ai

第7回では、ついにこれまでデザインしてきたヨットがついに形になり、沖縄の海に浮かびます。

今回の旅の目的

これまで私たちはA.D.A.Mとしてヨットのデザインを進めてきましたが、一方で自動操船ヨットの技術の実装を進めてきたチームがE.V.Eになります。E.V.Eはラジコンヨットの自動操船技術の検証を、A.D.A.Mはヨット模型の浸水テストをすることが、今回の主なミッションです。

E.V.Eではこれまで、一般に流通しているラジコンのヨットをハックし、ドローン向けのフライトコントローラーで、プラン通りに自動操縦されるようシステムを組んできました。参加しているのは、主催であるeverblue社、子供向けの学びの場を提供しているVIVISTOP 柏の葉、ハードウェアの開発やプロトタイピングを行なっているASTINA、の3チーム。3チームそれぞれが作り上げてきたヨットで競い自動操船技術のナレッジを集めます。


競技内容は、海上に配置されたブイを決められた順序でターンし、速さと正確さを競います。正しくブイをターンすれば点が加算、緊急時はマニュアルでコントロールができますが減点されます。下記は競技内容の一例です。

レース当日

2日目はいよいよレース当日です。さてどんなレースになるでしょうか。

結果としては海の上でも自動操船は可能でしたが、課題もたくさん持ち帰ることができました。まずプールや湖などと違い、海では思った以上に風が強くかなりの推進力が得られる一方、風によって押されてしまったり、場合によっては倒れてしまうこともありました。また電子パーツの防水はしていたものの、長時間の航行ではわずかに浸水した海水から、塩分があることもあり、基盤の腐食などによるショートで壊れてしまうこともありました。今後はこれらの得られた課題を解決しつつ、2mスケールの実装に活かしていくことになります。

一方A.D.A.Mは

ラジコンヨットのレースと平行してA.D.A.Mチームは、デザインしたヨットの展示や、チームAとチームCそれぞれに別れて、浮力や動作のテストを行いました。

チームA(呂さん、堀川さん、塩澤さん、藤村さん)
チームB(西川さん、古賀さん)
チームC(杉山さん、櫻井さん、秋山さん、赤坂さん、加藤さん)
新井原さんにForm2でプリントしていただいた100mmモデル

チームA:3Dプリントヨットの浮力テスト

 

チームAの浮力テスト用模型。黒い部分は3Dプリントした船体(ハル)です。 ジェネラティブデザインの部分は、今回は簡易的に塩ビパイプで代替。

沖縄でのテストの目的は3Dプリントしたハルの浮力と浸水具合のテスト。
PLAで出力したハルに防水塗料を塗りテストを行いました。結果、3Dプリントしたハルは若干の浸水はあったものの、しっかりと海に浮かびました。

次のフェーズでは船殻の二重化や3Dプリントピッチの調整を行うことで、より大型の3Dプリントハルのプロトタイプにに進みます。

チームC:変形ヨットの動作テスト

チームCのヨット模型。前日まで作業したかいあって、コンセプト通り開閉するところまでできました。

 

 

海に浮かぶ姿をみれて感無量です。


マストの細かい設計まではできていないものの、しっかり風を受けて進んでいます!ラダーやキールでのコントロールもうまくいきました。

コンセプトとなった杉山さんのスケッチと閉じたヨットを運ぶ櫻井さん。未来の漁師はこんな感じで朝でかけるのでしょうか。

 

子供達も開閉の仕組みに興味津々でした。

今後のA.D.A.Mプロジェクト

これまでA.D.A.MではFusion 360のジェネラティブを使って、コミュニティメンバーと共にヨットのデザインをしてきましたが、今後はチームAのジェネラティブで生成したモデルを中心に、E.V.Eチームの操船機能を組み込んでいきます。また実際に海で航行できる形状に設計していくにあたって、ACTの金井さんの協力も得ながら、年内に2m級を完成させます。

今回のヨットレースは、LW WeekというLiving Anywhereという団体が主催するイベントの一貫として実施されたものです。詳細は下記のリンク先をご覧ください。

Living Anywhereとは:https://livinganywhere.org/about/
LA Week in うるま:https://livinganywhere.org/laweek/la-week-in-%E3%81%86%E3%82%8B%E3%81%BE/

ジェネラティブでデザインしたヨットが、自動操船技術で航行する。ますます面白くなる本プロジェクトに今後もご期待ください。

最新の記事一覧