• Column

最先端の IoT マテリアルを使って大きなアイデアを生み出すヒント

“IoT”という言葉が普通に使われるようになって、センサーデバイスとインターネットをつないだものづくりがますます面白くなっている。「何か作ってみたいけど、どんなテーマで考えたら楽しいだろう…?」 そんな問いに対するヒントになればと、3つのテーマで、ここ1年ほどに出てきた事例を集めてみた。

MTRL KYOTO より

MTRL KYOTO には最先端の技術を搭載したセンサーデバイスが常設、来館者は自由に手にとって利用・開発することも可能です。以下でご紹介するコラムは、MTRL KYOTOを運営するロフトワークのクリエイティブディレクター入谷による、『IoTものづくりのヒントとなる先行事例集』です。

 

農×IoT:土と水をハックする

スタートアップも含めてよく聞くのが、植物栽培を支援するソリューションだ。この領域は、外装やアプリの品質も含めて、かなり作り込んだものが多く出ている。

“Parrot FLOWER POWER”は、植木鉢の肥料・温度・湿度・光度を測ってスマホに通知。Bluetooth Smartを使ったアプリケーションだ。

アドトロン・テクノロジー社の“foop”は、野菜の水耕栽培をテーマに、種まきから収穫して食べるところまで一貫して、とても上質なデザインを提供している。

導電性インク AgIC と環境発電(エナジーハーベスティング)技術を組み合わせた“SenSprout”も、土壌の水分量検知から世界の水資源問題解決を見据えたサービスだ。

上に挙げた3つのように、比較的小規模な「土」のセンシングは、かなり先行しているイメージがある。
では、もっとスケールを広げ、「農業」くらい大規模になったらどうだろう?配線のしにくい畑、広大な農地をセンサーネットワークでカバーするには、アイデアが求められそうだ。人の手が入りにくい過疎地の山間部でも、センサーによる監視・可視化への期待があるはず。

PSソリューション社の“e-kakashi”は、「栽培技術の伝承」をテーマに、さまざまなセンサーのデータを集約する機器。920MHz帯の無線を用いて、見通し最大1km・1つのゲートウェイに100台のセンサーノードが接続可能と、かなり広範囲をカバーできそうだ。ただ、この製品はかなり機能が盛り盛りのハイエンドなもので、センサーノード1台が50万円近くと、かなり値が張る印象…。

帯広のスタートアップFarmnoteは、人工知能を用いた「牛」のためのウェアラブルデバイス “Farmnote Color” を今月から発売開始した。Farmnoteのサービスは、取得・管理するデータがすごく専門的で、畜産業の現場の課題にとことん踏み込んでいると感じる。

家畜群、あるいは魚群のコントロールも、「面をカバーする」ために、どのデータをどう使うのが効果的かの綿密な設計と、テクノロジーの活用が求められそうだ。

今月末 8/27-8/28 には、DMM.make AKIBAで、その名も「農業×IoTハッカソン」というイベントも開催される。「農」の領域は、ある種の「王道」だが、新しいアイデアの余地はまだまだ残っているのではないか。

山と海×IoT:遭難セーフティネット2.0

山と海での遭難で命を落とす人は毎年絶えない。特に最近は、ニュースでも中高年登山者の遭難が増えている印象がある。

ロフトワークきっての登山家・K氏によれば、通常登山道にはいくつかの「遭難ポイント」が設けられ、そこから電話で救助を呼べるようだ。しかし、スマホのバッテリーが切れてしまったら万事休すだ。そこで、スマートフォンやGPSに依存しないコミュニケーション方法が求められる。

長野県では、クリエイティブホープ社による「お守りBeacon」の実証実験が昨年行われている。Bluetoothが入った掌サイズのビーコンを持ち、Androidで情報を受ける仕組みだ。

(※本画像はITmedia記事から引用 http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1506/26/news019.html )

さらに、ドローンを使った方法もある。SKYROBOT社の「トリプルドローンレスキューシステム(TDRS)」は、登山者が身につけるビーコンが発する信号を、3機のドローンが拾って早期救助に結びつけるというシステムだ。
動く「ひと」が身につける発信端末と、その信号を拾う受信側との関係。山、あるいは海の人命救助につながるアイデアは、社会課題の解決に直結しそうだ。

成層圏×IoT:地球の外へ

センシングの対象は地上だけではない。実は気球を成層圏に飛ばしてさまざまなデータを取る取り組みは、近年さかんに行われている。

「成層圏気球」は、ヘリウム・水素で飛ぶゴム風船に、ペイロードと呼ばれるさまざまなセンサ・カメラを搭載するもので、さまざまな実験が行われている。

Googleも成層圏を使ったプロジェクトを進めている。“Project Loon”(成層圏気球インターネット計画)は、気球をWi-Fiのアクセスポイントにして、僻地にもインターネットアクセスを提供するというプロジェクトだ。インドやインドネシアで実現に向けた動きが始まっている。

成層圏、あるいはロケット・人工衛星にセンサーを搭載した「宇宙」のセンシングは、かなりスケールが大きい話になりそうだ。恥ずかしながら筆者は宇宙関係はさっぱり不勉強だが、テーマによっては小さなアイデアでも、「脱地球」につながる貢献ができるかもしれない。

お知らせ

こういった先行事例にピンと来て、何か作ってみたいと思った人にお勧めなアイデアコンテストが、半導体・電子部品メーカー「ローム」によるアイデアコンテスト ROHM OPEN HACK CHALLENGE です。ただいま MTRL KYOTOとFabCafe MTRLで、ローム製デバイスの展示中、その場で試作を行うことも可能です。

【応募締め切り 8/21(日) 】ROHM OPEN HACK CHALLENGE

また、8月末には MTRL KYOTO に集められた「はかる」デバイスたちを使った”ありえなかった”アイデアを考えるワークショップを行います。

【8/28(日)開催】「はかる」を 図る アイデア発想ワークショップ〜最先端デバイスの “ありえなかった” 使い方を考えよう!

ハードウェア・デバイスやAPIを使ったコンテストやイベントは、実際に自分たちで作る(開発する)ことがセットになっている場合が多いですが、上記のイベントは「大きなアイデア」「新規性のある用途」を発見することを重視していますので、エンジニアではない様々な職種の方のチャレンジを歓迎しています。

この夏は「大人の夏休みの宿題」的に、頭をひねってみるのはいかがでしょうか?
もちろんアイデアのプロトタイピングにも MTRL KYOTO をご利用ください。

 

最新の記事一覧