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ヒダクマ × MTRL Business Meetup CAMP 2024 ふりかえりレポート(後編)

みなさん、こんにちは。

ロフトワークMTRL事業部、クリエイティブディレクターの三浦です。

 

ロフトワークでは例年の恒例社内行事である『合宿』。

今年度は各事業部でそれぞれ合宿を行うこととなり、私たちMTRL事業部は関連企業である『株式会社飛騨の森でクマは踊る』と合同合宿を、7月11、12日の1泊2日でヒダクマの所在地である岐阜県飛騨市古川町にて行いました。

 

今回は2部に分けた振り返りレポートの後編をお送りします。(前半はこちら

初めて飛騨に訪れたメンバーの気づきや、何度も足を運んでいるメンバーならではの視点(さらには事業部長である弁慶からの熱いメッセージも…!)など、最後までお楽しみいただければと思います。

 

MTRLクリエイティブディレクター|村元壮

《合宿で得られた気づきと学び》

ヒダクマ代表の松本さんに連れて行って頂いたフィールドワークがとても学びになりました。私は7年間ほど木材業界にいましたが、広葉樹の施業地を見たのははじめてでした。国内でもほとんどないと思うので、非常に貴重な体験をさせていただきました。段階を追って施業方法別にその内容と結果を紹介いただきました。その結果を聞くと、現状で最善と思われる施業方法は、木材業界にいた人間からすると当たり前にも思えてしまいますが、ここに行き着くために実際のの森で実証し、何十年単位で検証しているそのプロセスこそが非常に大事であり、またそれを行政とともに伴走できているヒダクマのすごみを感じました。自然素材を扱う上での生産の現場を肌で感じることの重要性を再認識しました。

《検討した事業内容の振り返りや、今後の展望について》

チームとして、”森の祭禮”という森に関わる様々な活動をイベントとして行い、参加者を集め、その参加者へのアプローチを企業に売るというアイディアを発表させていただきましたが、個人的にはそのアイデアを形成するプロセスにおけるチーム内のディスカッションが非常に面白く、魅力的でした。ワークの時間が限定的だったため、最終的にはイベントの企画・コミュニティ形成といった既存のビジネススキームに載せる形でのアウトプットになりましたが、途中ででてきた、”森の時間・円環型の時間軸”、”豊かな自然=自然+人間の営みの共存”、”自分の人生を超えた時間軸を考える”などいった価値や意味をよりじっくり深堀りをして、ビジネスにまで落とし込むことができたらと思います。

 

プロデューサー、ラッパー|MAO

《合宿で得られた気づきと学び》

森の中を散策するだけで人間の免疫細胞を活性化しポジティブに作用すること、森が人に与えてくれているものと、人が介入することで守れる生態系があることを学びました。

飛騨の広葉樹林と河川が縄文時代の人の衣食住を支え、豊かにしてきた歴史がある上で、森と現代の人々の生活圏が切り離されている状況を、どのような形でまた再結合することができるかを考えるきっかけになりました。

 

《検討した事業内容の振り返りや、今後の展望について》

森林浴が好き、登山が趣味、何か森に還元したい、そういう思いを持った人は、現代にも大勢いると思いますが、問題はどうやって還元できるのか?が分からないことだと思います。

チームではお金が森を介して循環するような仕組みを考えることにトライしてみました。

 

いきなり森の近くに住んでください、お金を落としてください、は難しくても、例えば広葉樹を使った製品(建材、家具または香木みたいな嗜好品?)の売買に関わる人を増やすことや、森林ツアーを企業の福利厚生として販売することで、経済の仕組みの中から森にお金が回っていく方法を考えることはできると思いました(在庫抱えるリスクを避けてどう実現できるかという問題もありますが)。


個人的には、ファンコミュニティを持つYouTuberとヒダクマにコラボしてほしい(!)。木材加工職人や縄文生活愛好家などのニッチだけど数十万人の登録者を持つYouTuberがいるので、そういう人たちとの企画は個人的にも考えてみたいと思っています。

MTRLプロデューサー|中塚大貴

《合宿で得られた気づきと学び》

小さい頃、よく渓流釣りに行ってたので、近年の放流の問題が話題になり始めて、どうしたらいいんだろうか、と気になってたところでした。

人工産卵河川という選択肢があることを全く知らず、それが衝撃的でした。そうか、支流そのものをつくっちゃうなんて方法あるのか、と。

 

また、石を積むことに代表されるように自然との向き合い方にも畏怖の念を抱いてます。そしてそれがどうやって少しでも健全というか、持続的なかたちにできるのかなどが気になっています。

金を稼がねばならぬこと、こういうままならないものと付き合うこと。このバランスをどう取るか、なんて話を京都の木津川で活動する友人と話していました。

具体的には松隈の小水力発電が地域のプチベーシックインカムになり、共助のための余白を生み出しているように、そんな仕掛けができないものだろうかと思いますが、こういうことは現地に入って活動してないと、絵空事というか、リアリティが持てなくて、またモヤモヤしています。

 

《検討した事業内容の振り返りや、今後の展望について》

ヒダクマ×研究者・研究機関のポートフォリオマネジメントを検討したチームにいました。どなたかが「課題先進地区ではなく、地域の新しいあり方の実践地区になれると良い」と言った趣旨のコメントを書かれていて、納得したのですが、「新しいあり方」とは?というのを考えられなかったのは時間が足りなかったなぁと思っています。

ムーンショット型研究開発事業に代表されるようなミッション志向型政策やポートフォリオアプローチに関する勉強会を友人らとやることになり、個人の中では発展中。

そこらへんの戦略を練るWSをヒダクマとやれると良いのかなぁと思っているところ。

MTRLクリエイティブディレクター|三浦永

これまでロフトワークに所属する以前は、社員旅行や合宿など勤め先での課外活動などに参加したことはありませんでした。ロフトワーク(MTRLをはじめ各事業部)の合宿は単なる社員同士の親睦会ではないことは、すでにみなさんが知っている事実ですが、特に今回のヒダクマ×MTRLの合宿については共創事業を検討する/その種蒔きをする、ということで参加前から静かながらも確かな熱量を感じていたのをよく覚えています。

 

今回私はワークを実践する側ではなく、進行する側としてヒダクマの松山由樹さんと連携を行う役として立ち回っていました。ワークの設計やテーマの検討に至ってはかなり頭を悩ませ、「事業部のいちメンバー」として、自分の所属するチームがどう発展するといいか?ということは、中々言語化できるものではなく、一体全体どうすればいいものか…と連日苦戦していました。各リーダーにも度々ヒアリングをしたり、実際に一緒にワークを設計することで、なんとか当日まで漕ぎ着けたか?という気持ちで、実際合宿当日はうまく進行できるか不安が大きかったです。

 

ですが飛騨の土地に降り、ツアーに同行したりワークを通してそれぞれの抱える課題や、どういったリソースを活用できるか?と議論している様子を見ることで、この合宿を企画することの意義を目の当たりにしたように思いました。飛騨の土地を踏み締めて考えること、そしてその土地で働く同じ志をもった仲間と、より一層チームになるための議論を重ねる姿に、とても胸が熱くなり、飛騨に来る前よりもずっと、この先の未来を想像するのが面白いと感じています。

多分私は「事業を考える」ということよりも、こういった企画のサポートしたり、実際に手を動かして作っていくことに面白さを感じるのだろうな、という気付きにもなった気がしています。

だからこそ今回の合宿で、企ての種が生まれる瞬間を垣間見ることができて、自分としても考えの幅が広がったのではないかと思っています。

【事物連環を体感するフィールドで、具体的な未来のかたちを考える】
MTRL事業責任者|小原和也(弁慶)

MTRLチームは、幅広い材料・技術を扱うチームです。ヒダクマチームは、広葉樹を起点に、川上〜川下まで、広葉樹を起点に、幅広い活動を展開しているチームです。

 

2つのチームの共通点は、「素材」を扱っていることです。

同じ素材を扱っているように見えますが、私たちMTRLは、ヒダクマチームを2つの観点からリスペクトしています。

 

ひとつは「具体的なサプライチェーンを構築している」こと。

もうひとつは「事物の連環の心地よい出来事」に従って活動していることです。

 

ヒダクマチームは、約10年前に今ほど大きくはない関係性、頼りをきっかけに飛騨の地に設立しました。

設立当初のヒダクマチームは、広葉樹の知識が特段深いわけでも、なにか特徴のある技術やブランドがあったわけでもありません。

飛騨の地域に根ざす歴史、アイデンティティに寄り添いながら、地域の中で構築されてきたサプライチェーンを、より豊かに、新しい関係性が生まれるような形で、成長してきました。

 

具体的なものづくりのプロセスの中に、少しずつ参入すること、またそこから新しい関係性を発見し、つなぐこと。

そんな小さなプロセスの連続の中で、飛騨地域における広葉樹に関する活用の新しいアプローチが可能になり、より多様で豊かなサプライチェーンの構築につながっています。

 

ただ、もしかすると「具体的なサプライチェーンを構築している」という文字だけでは、ヒダクマの魅力が少し伝わりづらいかもしれません。

ヒダクマのアプローチ、活動をより魅力的にしているのが、2つめの視点「事物の連環の心地よい形」に共感した活動をしていることです。

この活動こそが、より一層ヒダクマの魅力を引き立てています。

 

事物の連環とは、私たちの行き過ぎた産業的活動により分断され持続可能性が失われてしまった物や事の連環・循環をつなぎなおし整えることを指します。

ヒダクマに訪問すると、ヒダクマのチームからいつも、森を歩くこと、地域のアクターと関わること、実際の素材を手で触れること、広葉樹が巡る循環を辿ることを通して、私たちをフィールドに包みこんでくれます。

私はこれまでに、もう何十回と飛騨に訪れていますが、訪問するたびに、ヒダクマメンバーがいざなってくれる「物や事の連環・循環」に関する新しい発見を得ることができます。

 

今回は、ヒダクマの社有林に踏み入る過程を通して、それをより感じることができました。

ワイルドに原生する木々に分け入り、クロモジの木から葉を採集し、その場で沸かした湯で煮出して、クロモジ茶を飲む。

このワイルドな経験を、どのように自身の中で位置付ければよいのか。

 

私たちが普段飲むお茶と、このクロモジ茶は、何が異なるのか。

この体験は、茶を飲むという経験は同じではありながらも、強烈に私の普段の暮らし中に埋め込まれた経験とな異なるものであることは事実です。

 

素材を用いて、つくること、働くこと、暮らすこと。

その事物が、無理ない形で連環し、その中に私たちが存在すること。

そんな事実を見つめながら、次の一歩を後押ししてくれる。

ヒダクマのもつこんなフィールドに、みなさん、ご一緒してみませんか。

<エピローグ>

いかがでしたでしょうか。

今回の合宿で出た企画案を元に今後もヒダクマとの協業を進めていけたらと、絶賛準備中です。

新しいお知らせができるように準備していきますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。

 

(MTRLクリエイティブディレクター 三浦永)

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