2000年代後半以降、英国を中心としたサステナブルファッションの潮流は、今やストリートのみならずハイファッションやファストファッションにも影響を与えるようになりつつあります。とはいえ、国連を中心とした国際政治による環境政策との関連や、60年代から続くヒッピー、パンク文化との継続性、そしてロンドンカレッジ・オブ・ファッションをはじめとする海外の研究・実践動向など、サステナブルファッションをめぐるコンテクストについて議論する場はいまだ多くありません。また、自然/経済/文化を包括的に循環させるという「意地悪な問題」について議論するにあたり、楽観的で短絡的な社会正義としてではなく、従来の「サステナビリティ」思想に対して批判的に議論する場が必要です。
今回は、バイオテクノロジーによる新しい素材開発や、地域、労働、ジェンダーの問題を巻き込みつつ、新たな作り方、売り方、買い方を要請している「循環〈サーキュラー〉」「持続可能性〈サステナビリティ〉」とファッションについて、議論を深めていきます。完新世に次ぐ新たな地質区分として提唱されている「人新世〈アントロポセン〉」の始まりとほぼ刻を同じくして、大量生産・大量消費のシステムへ移行したファッション産業は、「循環するファッション」へと移行することはできるでしょうか?
対話編の第四弾である今回のトークイベントには、福井の繊維産地と次代の創造性をつなぐデザインプロジェクト「make:fukui/XSCHOOL」のディレクターであり、デザインファーム・RE:PUBLICの共同代表でもある内田友紀さん、YCAMバイオリサーチのリサーチャーであり、サステナブルデザインが専門の研究者・津田和俊さん、身体と環境のインタラクティビティを多様な視点から探求するプロジェクトを手がけるファッション研究者・安齋詩歩子さんをお呼びし、自然環境とファッション、デザインの新たな関係性について議論します。
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『WET / WEAR – FAB / FABRICは、バイオクラブ・ディレクター石塚千晃とデザインリサーチャー川崎和也が主催する、バイオテクノロジーやデジタルファブリケーションとファッションについて考え、実践するワーキンググループです。』 デジタルテクノロジー前提時代における新たなファッションのあり方を議論するため、WET / WEAR – FAB / FABRICでは、「対話編」と「実践編」それぞれのプログラムにおいて、多様なアーティスト、デザイナー、研究者、企業人を巻き込みながら、「考えながら、作る」を実践していきます。