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素材のイノベーションを探求するプロジェクト始動 – 株式会社LIXIL マテリアルサイエンス研究所 × MTRL

こんにちは、FabCafe MTRL(MTRL Tokyo)のディレクター弁慶です。

私たちMTRLは世界3拠点(東京・京都・香港)に展開する、「素材」をテーマとしたクリエイティブスペース。日々行われるイベントやプロジェクトを通して、クリエイターが実際に素材に「触れ」インスピレーションを得ることで、新たなクリエイティブが生まれる場を目指しています。

 

※MTRL KYOTOとFabCafe MTRL(MTRL Tokyo)、2017年12月には香港にもMTRL Hong Kongをオープン。

そんなMTRLでは、素材に関わる企業とのコラボレーションプロジェクトも数多く実施。
今回は、株式会社LIXIL様(以下LIXIL)と行なっている「新規素材開発の為のリサーチプロジェクト」をご紹介します。

「素材のイノベーション」を起こすきっかけ作り

LIXILはみなさんご存知の「住まいと暮らしの総合住生活企業」、よりよいライフスタイルの創造に向けた様々な住宅建材を開発されています。

今回のプロジェクトのパートナーはLIXIL社内の研究チームである”マテリアルサイエンス研究所”の皆さん。マテリアルサイエンス研究所チームは、LIXILの商材の安定開発から新機能、新素材開発にむけ、素材の研究や技術開発を行う部門です。

プロジェクトのゴールは「新素材の研究開発コンセプト」を探求しプロトタイプを創造すること。
これまで、一般的な住宅建材(=耐久消費財)では「汚れにくい/色褪せない/壊れにくい」など、いかにそのままの質感を保ちながら長持ちするか、という目標に向かって研究開発が進められてきました。その結果、このニーズにおける技術開発は進み、日本の住宅建材の品質は世界でもトップクラスの品質を保っています。

しかし、ライフスタイルの多様化にともない、居住環境も複雑化し、技術や開発される素材もコモディティ化が進行し「素材のイノベーション」を起こすためのきっかけがつかみにくい状況になっています。

そこで、新しい素材開発に向けた研究開発コンセプトを探求すべく、本プロジェクトが立ち上がりました。

「Research Through Design」によるコンセプト探求

新しい素材開発を行うには、開発要件となるコンセプトが必要です。
ではそのコンセプトをいかにしてつくりあげていくのか。

新しいコンセプトを発見していくためには、いくつかの方法があります。
市場の動向やニーズを探るマーケティングリサーチ、最新の技術や研究動向のリサーチ、ワークショップやハッカソンで新しいアイデアをプロトタイピングするもの、アーティスト/デザイナーとの協業によるコンセプトモデルの開発など、様々な手法がありえます。

しかし我々は今回、この中のモデルにはないアプローチでプロジェクトを進行しました。それは、制作を通して問題の所在を明らかにし、解決案を模索していく「Research Through Design」という手法を通して、素材のコンセプトをつくりあげていくというものです。

「Research Through Design」は、
①課題の設定/観察〜
②仮説の設定/言語化〜
③制作〜
④検証/評価〜
⑤解決策の提案/観察…

というように、観察やアイデア発想、プロトタイピングを何度も小さく回しながらアイデアを探求していくモデルです。

このように、少しずつ多様な観点からアイデアのブラッシュアップを繰り返していく中で、素材の開発要件を明らかにしていきます。

※「Research Through Design」とは、アメリカの著述家Christopher Fraylingによって提唱された、実践的な手法としてデザインを捉える態度のこと。「“Research in Art and Design,”Design:Royal College of Art Research Paper, Vol.1, No.1, UK, Royal College of Art, 1993.」という論文で提唱され、様々なアプローチが実践されています。

3日間の合宿を通し観察と議論に没頭する

そしてResearch Through Designのプロセスで「素材に触れ、観察し、コンセプトを発見する」ために、今回のプロジェクトではMTRL KYOTOを使った3日間の合宿形式でのリサーチを採用しました。

合宿形式を採用した目的は以下の理由から。

  • 机上の論理よりも具体的なフィールドからの学びを大切にする
  • 3日間という時間制限によって密度の高い議論を促す
  • 普段と異なる環境からの刺激で視点の変化を促す

新しい素材開発に向けた可能性を探求するために、具体的なフィールドから観察を行い、集中的に情報を集約、ディスカッションしていく中で、新しい素材の可能性を検討していくのです。
さらに今回の合宿では、4名のクリエイターにも参加をして頂き、クリエイターの持つ独自の視点も交えてテーマに取り組みました。

「新しい素材のコンセプト」を探求するリサーチ合宿

具体的に合宿で扱ったテーマの詳細や合宿の結果は公開することができませんが、どのような形式で合宿が展開していったのかご紹介をしていきます。合宿では、3つのアプローチを実践しました。

街中にある「素材の表情」を観察する

合宿でまず取り組んだのが、「素材の観察」です。京都の街並みの中にある様々な建材/素材に着目し、その素材を観察し、直感的に「面白い」と感じたものを写真に撮影していきました。例えばその建材は周りの環境とどう調和しているのか、どんな条件下でどんな表情を見せているのか、その素材を目の当たりにした私たちは、それにどのような感情を抱くのか…。心を研ぎ澄まし、素材が持っているストーリーに耳を傾け、実際に触り、写真におさめます。

観察結果からキーワードを発見する

フィールドから様々な素材の観察してきたあとは、撮影した素材を一気に振返り、その価値を言語化していきます。なぜその素材は良いと感じたのか、様々な角度から議論し、言語化していきます。

新素材開発のコンセプトとなるアイデアを発想する

「なるほど、私が気になった素材は、このような観点から面白い素材なのか!」
素材の観察を経て、アイデアの種となるキーワードがたくさん出てきました。ここからは、具体的に出てきたキーワードを空間やシーンに即して具体的に考えていきます。
この観点を床材に活用したらどうなるか?
テラスにはどんな機能があるか?
その機能があることで外壁はどんな表情を見せるのか?
観察したキーワードから言語化された観点をいろんな素材、建材に当てはめながら新素材開発のアイデアを発想していきます。

「新しい素材のアイデア」を描き、マッピングする

出てきたアイデアの種を、次はスケッチに仕上げていきます。素材の観察〜要素の言語化〜他の要素の掛け合わせの発想〜スケッチ、というプロセスを経て、具体的にどんな素材イメージなのか、だんだんとアイデアの輪郭が生まれきました。

今回の合宿でこのプロセスを実践した結果、70を超える素材のアイデアが出てくることになりました。最後のプログラムとして、生まれたアイデアを俯瞰し、整理する作業を行いました。出てきたアイデアの整理の指標として「世の中にまだない新素材 ↔ 既存技術等の組み合わせ」「マーケット(需要)大 ↔ マーケット(需要)小」という4象限を設け、その中にアイデアを配置していきました。

プロトタイピングと評価のサイクル

今回の合宿のミッションはここまで。ですが、プロジェクトはこれで終わりではありません。
ここからは、新素材開発に向けたコンセプトを形にし検証/評価をする段階に入ります。

今回のプロジェクトの成果は2018年9月ごろにお披露目できる予定です。続報はMTRLブログで引き続きレポートしていきますので、お楽しみに!
みなさんも、新素材、新技術、新しいプロダクト開発など、新しい価値創出に向けた、プロジェクトをご一緒してみませんか。

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