Column

2018.12.15

空間デザインの新しい方法をつくる『道具』とは?ーイベント「空間デザインの道具箱VOL.1」開催レポート

FabCafe編集部

Tokyo

新しい空間づくりの方法を発見し、実験と提案を行う「WAKUGUMI PROJECT(ワクグミプロジェクト)」が始めたイベントシリーズ、『空間デザインの道具箱』。”空間デザインの枠組みを更新する『道具』の進化を体験する” をテーマに、毎回様々な切り口で『道具』を集めて紹介し、体験してもらう。これからの空間デザインにどう活用できるか、参加者と一緒に考えていくオープンな勉強会です。

記念すべき第一回目は、2018年11月21日にMTRL TOKYOにて開催。Mixed Realityのプロ集団株式会社ホロラボや、デイリーポータルZのライター爲房氏、株式会社凸版印刷など(一瞬、共通点を見出しにくい)全6チームが集い、空間デザインの方法を更新(するかもしれない)『道具』たちを紹介。実際に体験もしてもらいました。今回は、その一部をレポートとして紹介します。

はじめに、「WAKUGUMI PROJECT」の呼び掛け人であり、自らも空間デザインユニット岩沢兄弟として活動する岩沢卓が、イベント開催の背景について語りました。

これからの「空間」はどこまでが「空間」? 「空間デザイナー」は何をデザインする?

「空間」と聞くと、僕たちが存在してるこの ”場” のことを指すことが自然かもしれませんが、本当にそうなのでしょうか?

岩沢兄弟(有限会社バッタネイション)岩沢卓

僕たちはSlackやFacebookで気軽にコミュニケーションを取り、ARやVR、Mixed Realityなどの開発環境は整い、今まで以上に、コミュニケーションするための空間を気軽に作れるようになってきています。通信速度もどんどん上がり、リアルタイムでほぼすべてのやりとりが完了する。インターネットが拓いた情報空間の世界は、もう、僕たちの生活の一部どころか、日常のほぼすべてに融け込んできています

仮に、この僕たちのいる空間を「実空間」と呼ぶならば、実空間のデザイン方法は、情報空間が拓かれるもっと前から、さほど変化がないように感じます。
もちろんすべての空間づくりに変化がないとは言いませんが、もっともっと、実空間のつくり方に多様性があっていいんじゃないか?そう感じるようになってきました。

空間デザインの方法をデザインする。そのための『道具』を集める、つくる、使いこなす。

実空間のつくりかたの基本は、空間コンセプトがまずあって、それを実現するための図面があり、CGや模型をつくり、それぞれを検証・承認した上で施工し完成します。けれど、仮想空間・情報空間と呼ばれるもののほうが現実感があるのであれば、そこから育てる空間づくりもあるかもしれない。そんなときはどんな工程で、どんな方法で空間デザインをするのだろうか。
あるいは、ほとんど工程を変えなかったとしても、新しいテクノロジーを柔軟に取り入れることで、作業時間をグッと縮めたり、早い段階で色々な人たちを巻き込む方法も、探せばもっとたくさんあるんじゃないかと考えました。


これからは、空間デザインに関わる人たちが、空間デザインの方法までをも開発するような姿勢と実践が大事なんじゃないか? そう考え、「新しい空間づくりの方法を生み出すかもしれないモノや工夫や経験値を『道具』として集めてみようと思いました。

ここであつめた『道具』を、実際に使ってみたり、組み合わせてみたりしながら、新しい空間デザインの方法をデザインしていくことをみなさんと一緒に続けてみたいと考えています。



というわけで前置きが長くなりましたが、これから第一回目にゲストとして参加した全6つの道具を紹介します。

tool001:「つながる」から「一緒にいる」に変わる、無線コミュニケーションツール

BONXは、独自のイヤフォンとアプリを組み合わせることで、相手との距離が無制限で、かつ10人まで同時通話可能なIoT音声コミュニケーションツール。

創業者宮坂氏が「スノーボード中に仲間と話したい」というニッチなニーズから生まれ、「わ!今のメイクまじやばい!」「やば!」といった「常時接続による、距離制限を越えた感情の共有」が売りのコミュニケーション体験プロダクトです。


例えば、BONXのようなツールを利用したオフィスワークの場合は、どんな空間づくりになるのでしょうか? 「一緒にいる」感覚をもてるなら、在宅ワークも一層拡がるかもしれません。海外メンバーとも今までと違った関係へ深化できるかもしれません。一方「声のやりとり」が中心となる進化には、ヒトの姿や形は新しい捉え方ができるかもしれません。
#VRオフィス成立のヒントは声でやり取りすることの進化かもしれない
#出勤の儀式を実空間でつくる?
#出勤の概念をどのように実空間に反映するか
BONX:https://bonx.co/ja/
BONX for BUSINESS:https://bonx.co.jp/

tool002:「むだなものをつくる」発想から始める空間ハック

会社員の傍ら、「むだな ものを つくる」というブログ運営や、デイリーポータルZでライターとして活躍する爲房氏。今回は、これまで作ってきた数々のむだなものを通じて、当たり前だと思われている日常空間の崩し方のヒントを教えていただきました。

例えば、機内食の専用トレー。このトレーに自分のお弁当やマクドナルドのバリューセットをいれるだけで、「飛行機気分」が味わえたり。


目覚ましをセットする変わりに、時間になったらカーテンが落ちて日光を浴びれる仕組みをつくったり。

「非日常のものを日常に持ってくる」と「日常のものを非日常的な動きにする」。この2つのヒントは、空間デザインにも活用できそうです。
#日常空間にひとつ非日常のものを取り入れてみよう
#見過ごしてた日常のものを取り出して非日常的な動きにしてみよう
むだな ものを つくる:http://stamefusa.hateblo.jp/

tool003:自動図面作成ツール「WAKUGUMI β」

「WAKUGUMI β」は、必要な寸法を入力するだけで、家具製作用のデータを無料で取得できるWebサービスです。横・縦幅、板の厚みを指定して、用途を選択すると棚のピッチを含めた図面を自動生成し、CADデータとしてダウンロードすることができます。あとは、ホームセンターで材料を揃えたり、CNCで切り出して組み上げるだけで完成!
現在は棚のみですが、今後テーブルや椅子なども追加予定。


専用のiPhoneアプリ(試作中)を立ち上げると、ARでシミュレーションしながら寸法決めも可能。


材料用意に1日。実際の組立は30分で完了しました。

デザイナーが設計した家具を、ほしい場所にほしい大きさで自分で作れる。その手軽さを活かして空間プロトタイピングのツールとして使ったり。あるいは、家具を作って設置して観察することを先行してみたり、空間デザインプロジェクトに多様な立場のひとを巻き込む装置として利用してみたり。発想次第で様々な使い方ができそうです。
#空間プロトタイピングツールを使ってみよう
#実寸プロトタイピングで空間観察からはじめてみる
WAKUGUMI β:http://www.wakugumi.com/

tool004:LEDで大容量ワイヤレス通信!すると、何が変わる?

LEDの光を利用した大容量・無線通信技術「光子無線通信」。今までケーブルで繋がないと通信できなかった大容量データを、LED無線(光)で繋げます。当日のイベントでは、実際にLED無線通信でデータ通信デモを実演してもらいました。

この機械を使うと、例えば鏡を使って反射させれば、光の経路を曲げることが可能です。また、水中もケーブルレスで大容量データ送信が実現できるとのこと。今まで、物理環境の弊害でデータ送信が難しかったエリアでの利用ができるようになります。


しかし、今回盛り上がったのは別のポイント。それは「ケーブルレス化することで、より実世界で “データの送受信” を体感できるのではないか?」という問いでした。例えば、前述の鏡の活用して光を見つめながらデータの存在を実感したり、データ送受信の間に人間が立つことも体験できる。 日常あたりまえになっている現象を捉え直す機会にもなりそうな発見ある議論が広がりました。
#データ送受信の間に人間が立てる
#ケーブルだと隠されるけれどケーブルレスだと見える場所でデータやりとりできる
光子無線通信:https://www.toppan.co.jp/news/2018/10/newsrelease181015_1.html

tool005:HoloLens 距離計測

Microsoft HoloLensは、マイクロソフトが販売する、初の自己完結型ホログラフィックコンピューターです。専用ヘッドマウントディスプレイ(略:ホロレンズ)を装着すると、実世界の中に、ホログラフィックの世界も出現します。

ホロレンズ使用中

HoloLens距離計測は、ホロレンズと専用の距離計測器を使って、実空間の距離を瞬時に計測することができます。計測したデータが空間に残るので、メジャーとは違った距離計測体験ができます。


仮想現実は、実空間と違って人の記憶に頼らず、情報を記録したり可視化つづけられます。この特徴を活かせば、距離計測以外にも空間デザインの道具を生み出せそうです。
#空間上に、目に見える形で情報を記録できる

tool006:ホロレンズ茶会

ホロレンズを使ってヴァーチャルな茶室を出現させ、そこでリアル(本物)な茶人がお茶を振る舞う。フィジカルとデジタルをつなぐ「ホロレンズ茶会」は、「時間と空間を超えたコミュニケーションの新しい形を探る実験」の場です。
ホロレンズ茶会であれば、オフィスや公園、展示会場などどんな場所にも茶室を出現させることができます。


ホロレンズの面白さの一つは、実空間の既成概念やルールに縛られずに、専用グラスを通じて自由な発想を先行して実空間に重ねて具現化できることです。理想の空間と体験を同時にプロトタイピングできるツールとして、まだまだ使い方を探索する余地がありそうです。
#既成概念やルールに縛られずに理想の空間を形にできる

VOL.2は、2019年2月に開催予定…!

当日は40名以上の参加者に迎えられ、無事すべての『道具』紹介し、その後の体験&自由時間で盛り上がりつつVOL.1は終了。次回開催も会場同じくMTRL TOKYO(FabCafe MTRL)にて、来年2月を予定しています。ぜひ、遊びに来てみてくださいね。


■イベント概要

SPACE DESIGN TOOL BOX VOL.1
「空間デザインの道具箱」
日時:2018年11月21日(水) 19:00-21:30(開場:18:45〜)
場所:MTRL TOKYO(FabCafe MTRL
   東京都渋谷区道玄坂1丁目22−7 道玄坂ピアビル2階
参加費:1,000円(1ドリンク付)
定員:40名
企画:WAKUGUMI PROJECT
協力:MTRL TOKYO(FabCafe MTRL)
出展/登壇者:
岩沢兄弟(バッタ☆ネイション)/堀川淳一郎(Orange Jellies)/株式会社ホロラボ Co-founder 前本 知志/K.Tea’s Lab 高橋 浩二/株式会社BONX/爲房新太朗/凸版印刷株式会社 ほか
URL:https://mtrl.com/shibuya/events/spacedesign_toolbox_vol-1/

■WAKUGUMI PROJECTについて

空間デザインユニットの岩沢兄弟(岩沢仁+岩沢卓)と建築系プログラマーの堀川淳一郎(Orange Jellies)を中心に始動したプロジェクト。いまだから出来る、新しい空間づくり・場づくりの方法を発見し、実験と提案を行う。2018年10月、誰でも簡単に図面がつくれる家具DIY支援ツール「WAKUGUMI β」を公開。

http://www.wakugumi.com/

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