Column

2018.3.18

京都駅前地下街ポルタ× MTRL KYOTO|若手クリエイターとのコラボによるアートウォールをお披露目

FabCafe Kyoto編集部

Kyoto

新しくなった京都駅前地下街「ポルタ」の一角に、クリエイターとのコラボ作品を常設

京都は観光都市であり、華やかな文化の中心地として国内外から沢山の旅人が訪れます。
「Porta(以下、ポルタ)」は、そんな京都の玄関口であるJR京都駅の地下街。旅人だけでなく、通勤やお仕事で京都に来た人、そして京都で暮らす人、いつも多くの人が交差する空間です。

この京都駅の地下街「ポルタ」のエリアリニューアルに際して、MTRL KYOTOとゆかりのあるクリエイターとのコラボレーション作品が「アートウォール」というかたちで常設されることになりました。MTRL KYOTOの最寄駅のひとつでもある京都駅。京都駅からMTRL KYOTOに徒歩で向かう場合は、このポルタを通るルートが快適かつ最短で、MTRLのスタッフにとっても馴染みの深い場所です。

本レポートでは、約3ヶ月に渡ったこの「アートウォール」プロジェクトで、いかにしてコラボレーション作品、そして空間をデザインしていったのか、その過程をお伝えします。(text : 木下 浩佑 [MTRL KYOTO])

 

クリエイター・作品紹介

今回のプロジェクトには、3名のクリエイターが参加しました。それぞれに個人クリエイターとして活動している3名の共通点は「自然素材と手仕事を用いて、歴史や文化と現代のクリエイションをつなげている」ところ。アートウォールでは、グラフィカルな表現のみならず「もの」としての存在感や「京都で暮らす人の息遣い」を感じさせる作品づくりを重視しました。

周防 苑子(ハコミドリ)

ソロプロジェクト「ハコミドリ」として、家屋解体時の古いガラスと植物を用いた作品を発表している。
http://hacomidori.com/

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アートウォール作品について
「水屋」と呼ばれる、日本古来の食器棚を着想の原点としながら展開。古いガラス、廃材と植物を用いて造形の美を表現する独自の手法と織り交ぜつつ、他の作家の制作過程をも作品に取り込むことで、「おくどさん」を取り巻く様々な心象風景を切り取っている。 [マテリアル:ガラス、植物]

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村上 耕太(零 -REI-)

太古の前衛をテーマにしたブランド「零 -REI-」を立ち上げ、染の技法を用いた作品制作を行っている。
http://www.reibag.com/

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アートウォール作品について
「気配を染める」をコンセプトに、「おくどさん」と家庭の暮らしを守ってくれているものを革と染の組み合わせで表現。京都の多くの台所に置かれている愛宕神社「火迺要慎」の札の意匠を革に写し取り、その周囲の気配ごと、大胆かつ繊細に染め上げることで、革と染による「一期一会」の質感と模様が生まれている。[マテリアル:革、染(藍染)]
*本作品制作にあたっては、愛宕神社より制作の認可を頂いています。

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柴田 明(柴田漆工房 / erakko)

柴田漆工房での活動に加え、木と漆のブランド「erakko」を立ち上げ、器の制作を行っている。
http://erakko.sakura.ne.jp/

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アートウォール作品について
「身近にある見知らぬ世界、境界線、結界」をコンセプトに、「おくどさん」の要素として普段制作している「漆の器」に着目。日常生活で当たり前に使われている「器」が生まれる過程や、漆が塗られることで変化していくその表情を「境界」として、身近でありながらも知られていないその様相を伝えている。[マテリアル:木、漆]

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皆さん、MTRL KYOTOで毎月開催している”つくる”をテーマにした交流イベント「Fab Meetup Kyoto」のプレゼンターでもあり、「その人がなにを大切につくっているのか」をあらかじめ共有できていたことも、プロジェクトの進行にあたってポジティブな効果をもたらしました。

オープンコラボレーションによる作品・空間づくり

この「アートウォール」プロジェクトはポルタ株式会社スペース(以下、スペース社)、MTRL KYOTOを運営する株式会社ロフトワークの共同プロジェクトとして、2018年3月にリニューアルするポルタのおみやげものエリアに常設される作品を京都の若手クリエイターとともにつくるものとして企画、実施されました。

きっかけは、さまざまな公共空間・商空間のデザインを手がけるスペース社が、ポルタのリニューアルにあたって「京都のものづくり・クリエイションのハブとなっているMTRL KYOTOと一緒に、京都にゆかりのあるクリエイターとコラボレーションしたい」とMTRL KYOTOに声をかけていただいたことでした。

キーワードは「共創」。施設の方(ポルタ)、空間全体をデザインする方(スペース社)と複数のクリエイターが、ビジョンやコンセプトを共有しながら「一緒に新しいポルタの世界観を体現したアートウォールをつくる」ことを大事に、MTRL KYOTOを運営するロフトワークのプロデューサーとクリエイティブディレクターが、ワークショップやディスカッションを通じてプロジェクトを進行してきました。

テーマワードは「おくどさん」

エリアコンセプトは「京都暮らし」。このコンセプトを表現するモチーフとして、スペース社は「おくどさん」というキーワードを設定しました。おくどさんとは、竃(かまど)を指します。また、煮炊きする場所、つまり台所という意味で使われることもあります。家族の命を支える「火」であるおくどさんは、電気のない時代‪から家の守り神とされてきました。おくどさんにまつわる様々なインスピレーションと若い作家たちそれぞれの解釈が今回の作品には潜んでいます。

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関わる皆でアイデアやビジョンを共有し「自分ごと」化するワークショップ

2017年12月に、アートウォール制作にあたり、プロジェクトに関わるメンバー皆(ポルタの役員のみなさん、スペース社のプロジェクト担当者さん、クリエイター、MTRL KYOTO / ロフトワークスタッフ)でワークショップを開催。参加者それぞれが持つ、京都にまつわる記憶やインスピレーション(たとえば、「時間の移ろい」「光度」「質感」「匂い」「目に見えないものへの畏れ」…などなど)を辿りながら、ともに「京都らしさとはなにか」について語り合いコンセプトを練り上げていきました。

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▲ポルタ・スペース社・クリエイター・MTRL KYOTO&ロフトワークスタッフ混合のグループを3組つくり、アイディエーションとコンセプトメイキング。皆にとってプロジェクトが「自分ごと」化して、「アートウォール設置エリアがどんな空間になってほしいか」を共有しあう時間となりました。

プロトタイピングを繰り返しながらディスカッション

年末からは、ワークショップを経て見えてきたコンセプトを、各クリエイターがそれぞれ作品に落とし込む制作のフェーズに入りました。オンラインのグループ上で常時、またときにはMTRL KYOTOに実物を持って来たり、ときにはクリエイターのアトリエに訪れたり、進捗状況やアイデアの共有を行いながら、フィードバックを繰り返す。実質2ヶ月の制作期間のなかで、コンセプトがどんどん具現化されていきました。

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▲MTRL KYOTOにクリエイターが訪れ、ディスカッションや実験を繰り返しました。

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▲各クリエイターのアトリエに訪問。作品が生まれてくる様子を目の当たりにして、そこでもアイデアの交換が行われます。

ポルタに作品が設置!

2018年3月20日、ポルタのリニューアルエリアはグランドオープンします。この「アートウォール」には、作品だけでなく、今回のプロジェクトの思いやプロセスを伝えるためのキャプションボードもあわせて設置されています。京都駅に訪れる際は、ぜひポルタを “路地を散策するように” 歩いて、楽しみながら探してみてください。

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MTRL KYOTO / ロフトワーク プロジェクトメンバー

上ノ薗 正人(ロフトワーク クリエイティブディレクター)
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大阪生まれ大阪育ち。九州大学芸術工学部環境設計学科卒業。大阪のデザイン事務所grafで丁稚として修行後、再び福岡に移住。福岡の古ビル再生プロジェクト「紺屋2023」の設計、運営を行うno.d+a / TRAVEL FRONTでの勤務を通してデザイン、建築設計からイベント運営、アートプロジェクト等幅広い業務に携わる。
2014年に関西に戻り、グランフロント大阪ナレッジキャピタルの総合プロデュース室に所属。アルスエレクトロニカとの協働プロジェクトや中高生を対象とした学びのプログラムを担当。2017年よりロフトワークに入社。趣味は野球観戦とハイキング。


松岡 大輔(ロフトワーク プロデューサー)
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大阪府出身。プログラマーとして制御系のプログラミングを経験した後、Webへの興味からWebディレクターの道へ。大学サイトやコーポレート、プロモーションサイトなど大小様々なディレクションに携わってきた中で、より幅広いクリエイティブに関わりたい一心でロフトワークへ入社。現在はWebサイトの提案からディレクション、その他のイベントに関しても精力的に取り組み中。


篠田 栞(ロフトワーク プロデューサー)
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京都大学卒。広告代理店で化粧品メーカー、製薬会社等のプロモーション、ディレクション業務を担当。イベント企画、デジタル広告、IoTを使ったプロモーションなど幅広い業務に関わった経験を生かし、関心領域である地域産業や工藝の領域を盛り上げるべく2016年ロフトワーク入社。
プライベートでは、在学中から続けている能楽を中心とした伝統芸能のイベント企画・舞台出演にも取り組み中。ロフトワーク京都のとあるイベントで、突然囃子を演じ会場を驚かせた経歴をもつ。


木下 浩佑(MTRL KYOTO・FabCafe Kyoto マネージャー)
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京都のカフェ「neutron」・東京のアートギャラリー「neutron tokyo」にマネージャーとして勤務したのち、廃校活用施設「IID 世田谷ものづくり学校」ではクリエイターのワークショップや展示、企業や学校・自治体とのコラボレーション、Fabスペースの立ち上げなど館内企画を担当。2015年より株式会社ロフトワークにジョインし、クリエイティブラウンジ「MTRL KYOTO」では立ち上げフェーズから継続して店舗サービスのマネジメントと企画に携わる。2017年6月には、MTRL KYOTO 1階に「FabCafe Kyoto」をオープン。地域や専門領域を超えて交流や創発を促す”媒介”であることをモットーに活動中。
https://mtrl.com/kyoto/
https://fabcafe.com/kyoto/

コラボレーション大歓迎!

MTRL / ロフトワークでは、さまざまな素材やテクノロジーとクリエイターとのオープンコラボレーションによるプロダクトや空間づくりを、コンセプトメイクから制作ディレクションまで行なっています。ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

■ 株式会社ロフトワーク https://loftwork.com/jp/
■ MTRL https://mtrl.com/

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